食品業界は久しぶりにパラダイムシフトが起こりつつある。
そもそもパラダイムシフトはそんな頻繁に起こるものではないためパラダイムシフトという表現は適切ではないかもしれない。Fintechという言葉が定着しつつあるように、食品業界でもAgritechやFoodtechという安っぽい言葉でまとめられつつある。
そんなFoodtechを代表・象徴するものに植物肉(大豆肉)がある。
大豆肉は身体にいい?
大豆肉のイメージは「身体にいい」だろうか。
この「イメージ」の前提にあるのは「動物性タンパク質/油脂は身体に悪い」もしくは「動物性タンパク質/油脂より植物性タンパク質/油脂の方が身体にいい」であろう。
そもそも「身体にいい」の定義から考えねばならない。この場合、「身体にいい」の定義は「病気になりにくくなる」「身体の調子が良い」、と言ったところだろうか。
大豆肉で病気になりにくくなる?データは?
では、メディアの報道や論文などで大豆肉で病気になりにくくなる、と言った報告やデータがあるだろうか。おそらくベジタリアンの疫学調査から調査は可能であろう。しかしちゃんとしたエビデンスが大きく取り上げられたことはないし、その反証もみられない。民放では圧力がかかっていて取り上げられない可能性もあるが、中立的なメディアやSNSもそのようなことを取り上げない。
別の視点で見ると動物性のタンパク質・油脂を一般人通り摂取している人も健康で文化的で長寿な生活を送っている人は多くいる。
つまり「大豆肉で病気になりにくくなる」と考えるのは安直なイメージと考えた方がいいだろう。
身体の調子がいい?動物性タンパク質だと調子が悪いということ?
「大豆肉は身体にいい」と考えたとき、病気になりにくくなると考えるのが難しいとした場合、「身体の調子がよくなる」と解釈することができることになる。
果たして本当だろうか。
私は基本的にタンパク源は動物性に頼ることが多く、大豆等だけで済ませることは少ない。
こちらは個人で容易に評価が可能であろう。例えば豆腐や枝豆をタンパク源として数日間「大豆だけ」として生活してみると良い。
おそらく変わらない、もしくはバランスよく食べた方が調子が良いと気がつくだろう。
アミノ酸スコアは肉と同じで「100」
食品中の必須アミノ酸の比率を評価するときに用いられる尺度であるアミノ酸スコアで見ると大豆と牛肉のいずれも「100」。
つまり基本的にバランスは問題ないことになる。つまり大豆を肉、いずれを摂取しても栄養学的な観点から大丈夫。
(ただし政治的な問題はある)
このアミノ酸スコアを調べてみるとわかるのだが、業界によって謳い方が異なることに気がつくだろう。例えば大豆製品を扱うメーカーは「大豆の方が消化が良くて優れている」とするが、肉関係の団体は「大豆ではあるアミノ酸が足らなくなりやすい」と述べたりする。
つまり「大豆肉が身体にいい」は勘違い
つまり、「大豆肉が身体にいい」は勘違いであり、動物性タンパクと比べて同等と推定される、ぐらいの結論しか導き出せない。
肉は身体に悪い、という刷り込みがあったりする場合はなんとなく大豆だから身体に良いがする、と思ってしまう。またダイエットをしている場合で肉を避けている場合も大豆だからと安心してしまう。
そう言ったところにある程度のマーケットが生まれていることになる。
大豆肉/ビーガンの本質は「健康」ではない
多くのメディアは「ビーガンは健康志向」と言うことがあるが、基本的にそれは勘違い(個人の信条でそう言う人が少なからずいることは推測できるため完全に勘違いとは言わない)。
※ビーガンは完全な菜食主義者。一切動物性のものを摂らない。
一部はそうかもしれないが、健康だからアメリカで大豆肉が流行っているのではなく、それはタンパク源となるまでに必要なコストが莫大である、と言うSDGs的な考え方がバックにある。
例えば牛肉を考えた場合、牛を飼育して食卓に上がるまでに97%のタンパク源が食卓にこない、と言う報告がある。これは牛自身が生命活動・成長していくために消費されているためである。
また水の消費も大きい。牛肉200グラムを得るために水は3,200リットル必要になると計算されている。
大豆の場合はそれがなく、そう言う意味で非常に効率が良い。
欧米でビーガンが増える背景には「健康」ではなく「環境問題」が背景にあると考えることができるのである。
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