食品ロスの状況と削減への取り組みについて

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SDGsの考え方が広がっていることも背景に、現在食品業界・小売業界では食品ロス削減への取り組みが進んでいる。

社会では実証実験等も行われており、食品ロス削減の成果が見られているものもある。ここでは日本の食品ロスの背景と現状、取り組みを紹介する。

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食品ロスの引き起こす問題とコスト

食品ロスが引き起こす問題は「もったいない」という考え方や食品廃棄そのものだけではない。そこに内在されるものも含めて問題なのである。

具体的には食料生産におけるエネルギーの浪費、流通・廃棄過程におけるエネルギー消費および二酸化炭素の発生が挙げられる。日本での廃棄においては自治体が負担しており、市町村のゴミ処理経費は1兆9,745億円(2017年)がある。一人当たりとして15,500円/年負担していることになる。ただし食品以外の廃棄も含マレている。

日本の食品ロスは約643万トンであり、うち事業系が約352万トン、家庭系が291万トンと推算されている。これは一人あたり年間51kg程度廃棄していることとなる。これには不可食部は含まない。日本以外の食品ロスに関しては国ごとによって算出方法が異なるため一概には述べられない。

一方で世界の人口の9人に1人が栄養不足である。なお日本の摂取カロリーから見た食料自給率は37%程度にとどまる。

SDGsのゴール12「つくる責任、つかう責任」

SDGsのうち、ゴール12「つくる責任、つかう責任」のうちターゲット12.3では「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。」と記載されている。本ターゲットは他のSDGs達成にも寄与する。

世界との足並み

2019年5月11日・12日の新潟農業大臣会合では「農業・食料分野の包括的かつ持続可能な成長に向けた農業・食料バリューチェーンへの着目の必要性」という内容の「2019年G20新潟農業大臣宣言」が採択された。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表した「土地関係特別報告書」では食品ロスおよび廃棄物の削減等を含む食料システム政策が温室効果ガスの低排出シナリオ等を可能とすることが示されている。2010〜2016年の間に世界の食品ロスおよび廃棄は人為起源の温室効果ガス総量の8〜10%に寄与したと考えられている。

食品ロス削減に関する法制度

食品ロス削減の優先事項として発生抑制をあげ、優先順位が高い順に(1)食品の再利用、(2)再生利用、(3)熱回収、(4)適正処分としている。

食品リサイクル法

食品リサイクル法の基本方針として新たに2019年に設定された方針として事業系食品ロスを食品リサイクル法の成立年である2000年度(547万トン)比で2030年度までに半減させると定めた。家庭系食品ロスも同様に2000年度比で2030年どまでに半減させる目標を「第四次循環型社会形成推進基本計画」において設定した。

また各食品廃棄物等の発生抑制に関する目標値は業種ごとに定められており、例えばパン製造業では166kg/売上百万円と目標を設定している。現時点でフラワーペーストは明確に設定されていない業種の一つである。この数値に関してはトレンドを把握した上で更新される。

食品ロス削減推進法

消費者庁が事務局となり推進しており、農林水産省、文部科学省(教育的側面)、厚生労働省(食品衛生)、経済産業省(CVS・ハイテク技術活用)、環境省(家庭系廃棄物)が担当する。

2019年中に本法律の基本方針が閣議決定され各自治体に落とし込まれる。

食品ロス削減に向けた取り組み

3分の1ルールの見直し

いわゆる3分の1ルールなどの商慣習の見直し。これは賞味期限の3分の1を小売業者の納品期限とし、さらに3分の1を販売期限とするというもの。

例えば賞味期限6ヶ月の場合、日本では納品期限として賞味期限4ヶ月、アメリカでは3ヶ月、フランスでは2ヶ月残すことが多い。

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流通ニュース(https://www.ryutsuu.biz/commodity/l052045.html)より

農林水産省には商習慣検討ワーキングチームがあり、納品起源の緩和、賞味期限の年月表示化、賞味期限の延長の三位一体の改革を進めている。

お客様での菓子等の喫食に関するタイミングの調査結果をもとに例えば3分の1ルールを2分の1とした場合の実証実験を飲料および菓子で実施したところ、小売店での廃棄負担が増加すると考えられたが、実際はそのようなことは起こらないことが実証されている。

この結果を受け、大手スーパーやコンビニエンスストアなどで清涼飲料、賞味期限180日以上の菓子、カップ麺において納品起源の緩和を実施予定としている。

一方で課題は残っている。例えば食品スーパーは3分の1ルールのままであるため卸売業者の入荷条件は厳しいままとなっている。また汎用物流センターを採用している場合も状況として対応ができない状況である。汎用物流センターでの実証実験を現在実施中。

今後はレトルト食品、缶詰等加工食品のうち、納品期限を緩和しても店舗での販売や家庭での消費に及ぼす影響が少ないと商品への拡大へ取り組んでいくとしているとしている。

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賞味期限の年月表示化

小売業において先入先出しの手間が省かれて在庫管理が効率化され、物流拠点館の商品転送が可能となる、メリットがある。

年月表示化に関しては日本醤油協会、飲料大手5社、全日本菓子協会、味の素株式会社が年月表示のガイドライン作成や呼びかけ、変更を進めている。

また日まとめ表示(10日単位での賞味期限設定)も案として上がっている。

2020年の10月30日までに全国一斉で商慣習を見直すことを呼びかける運動を実施している。

恵方巻・クリスマスケーキなどの季節ものへの対応

農林水産省の事務連絡により予約販売のみ、もしくはハーフサイズでの販売によりロス削減への取り組み。

恵方巻がTwitterで話題となったが、2019年の恵方巻では予約販売のみとしたコンビニエンスストアで売り上げが上がったりとメリットが出ている。

ローソン「Another Chance」

愛媛県と沖縄県の店舗にて賞味期限が近い商品の購入により5%のポイント付与および5%を子供たちを支援する取り組みに寄付の取り組みを実施。

利用客は延べ約70万人であり、食品ロス削減に寄与。

フードバンク

フードバンクは食品事業者から提供される食品を施設に受け渡す役割をする団体。

フードバンクのシステムとしては有望ではあるが、現実的には食品事業者の立場では不正転売や衛生管理の懸念、フードバンク側からはマンパワーの不足など課題が残っている。農林水産省は手引きを作成、フードバンク情報交換会の開催、税制対応を行っている。

ローソンは納品期限を迎えた商品について全国フードバンク推進協議会への提供に取り組んでいる。

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以上、今後はより一層食品ロスに関する話題がメディア等で増えてくる。我々の生活に関わりうることもある。積極的に協力していくことが望まれる。

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