トルコは目が離せない国の一つ。気がつけばトルコリラは暴落している。
2020年のオリンピックの開催都市の東京の対抗馬として残っていたのはイスタンブールだった。そんなことはどうでもいいのだが、そんなトルコは2023年に建国100年を迎え、ローザンヌ条約の密約にあると言われる資源開発制限が解かれる。おそらくエルドアン大統領(2014年〜)は「第二の建国」と躍起になってそれまで大統領のポストにいると思われる。
クルド人問題やシリア内戦といった内憂外患の中、孤高の権威主義国家 トルコの地政学について考えていきたい。
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トルコの地理条件
地政学について考えるので、まずトルコの地理条件を復習しておこう。
トルコはヨーロッパとアジアにまたがる大国。黒海と地中海(エーゲ海)を結ぶボスポラス海峡・ダーダネルス海峡を抑える。これは極めて重要なことで、北のランドパワー国家 ロシアを海に出さないことに一役を買う。
国境を面する国々としてはヨーロッパ方面はブルガリア、ギリシャ。南はシリア、イラク、東はジョージア、アルメニア、イラン。黒海を挟んですぐ北にロシア、ウクライナ、エーゲ海を挟んでイスラエル、キプロス、エジプト等が近い。
国際関係
概観と国際組織
トルコはイスラム教国(ただし政教分離主義)であるが、西側諸国としての立場。
第二次世界大戦後はマーシャルプランを受け入れて親米主義、NATOにも加盟している。また中央条約機構(CENTO)を設立して西側のソ連に対する最前線としての役割も担う。
※中央条約機構
中央条約機構Central Treaty Organization;CENTOは1959年から1979年まで存在した集団安全保障機構で、ソ連に対抗することを目的とした反共産主義の軍事同盟。印パ戦争や中東戦争には関与なしで有効に機能していないが、共産主義に対して一定の抑止力として効果はあった可能性がある。1979年のイラン革命により解体。
前身の中東条約機構が1955年にイギリス、トルコ、パキスタン、イラン、イラクで始まる(アメリカがオブザーバー)。1959年にイラクが脱退して中央条約機構となる。
アメリカとの関係
2003年のイラク戦争や様々な問題でしばしば反米の動きが起こるが修復される。前述の通り基本的に親米。
ロシアとの関係
16世紀以降、露土戦争や第一次世界大戦などの形で歴史的に対立。前述の通りトルコはNATOにも加盟。
一方でロシアからパイプラインを引くといった経済交流は活発で、ロシアから武器の購入や原発の設置などのやりとりもある。
逆にいうと、ローザンヌ条約での資源開発制限が解かれトルコ国内に油田やガス田が見つかった場合、トルコはロシアからのエネルギー依存から抜け出せる可能性があり、トルコとロシアの関係が変わりうる。
隣国との関係
ブルガリア、ギリシャ、キプロスに関しては歴史的な領土争い、人民交換といったことを繰り返しており、良好な関係とは言えない。またアルメニアやシリアとも対立状態。イランとは良好。
その他の国々
アゼルバイジャンとは良好。アルメニアとアゼルバイジャンは敵対関係にあることからアルメニアにとっては一段と脅威。
中国とは正常。日本とは緊密。またアフリカ諸国とは2021年末に「第3回トルコ・アフリカ パートナーシップサミット」が開催されており、これからより緊密に接していこうという動きがある。中東ではエジプト・イスラエルと関係修復中。
EU加盟
EU加盟に関しては、様々な理由をつけられて進んでいない。結局、キリスト教思想をベースとするEUにトルコが相入れられないともみられる。詳細な理由はこちら。
改めて見るトルコの役割
まとめてみると、トルコはボスポラス海峡・ダーダネルス海峡をうまくコントロールしながらロシアの南下を防ぎつつ、ヨーロッパに近づきながら他のイスラム国家とは微妙な距離を保つ、というイメージ。
ヨーロッパには安価な工業・農業製品を販売する。経済が強いとは言えないが、人口は8,000万人とポテンシャルは十分にある。
ローザンヌ条約の資源開発制限が解かれてどうなる?
トルコの広い面積の中で石油は100億バレル、ガスは1兆5千億立方メートルと莫大な埋蔵量であることが分かったとのこと(Wikipedia)。
トルコが産油国になればヨーロッパはロシアからのパイプラインに頼らなくても良い。ヨーロッパ方面への力を持つことになり、国際秩序が変わる。ドイツ等工業国との結びつきが強くなり、強いトルコが生まれていく可能性が十分に考えられる。一方やり方によってはEUとの対立の新たな火種を起こしかねない。
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文明の十字路のトルコ、ぜひ東西の架け橋となって平和な世の中に一役買っていただけることを切に期待している。
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