永世中立国と中立国、中立化・・・中立の事情を北欧情勢を含めて考える。

DSC03311 scaled - 永世中立国と中立国、中立化・・・中立の事情を北欧情勢を含めて考える。 地政学

国際関係上の文脈において「中立」と聞いてどこを思い浮かべるだろうか。

「スイス」「オーストリア」「第一次大戦中のアメリカ」「第二次大戦中のスペイン・・・」と色々ある。今回は国際法な意味において中立性を考えてみる。

特に三つの中立性、「永世中立国」「中立国」「中立化」に焦点を当てる。

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永世中立国

永世中立は自国の宣言、または国際条約によって将来の全ての戦争の交戦国に対して中立であることを義務付けられている立場をとる国家。集団的自衛権には入らない。

永世中立は戦時中の中立を定めたものであるため、平時中における国家間条約や経済条約への加盟等は認められている。また国連における平和維持活動への兵力派遣は中立義務違反とはされない。

永世中立国は極めて強力な軍隊が必要であり、国際的に非情になり基地の供与もできない。

歴史的には多くの国が永世中立国化を試みてきたが侵略されたり戦争に巻き込まれていることが現実である。

重要なのは「武装をしない」とは全く違う意味であるということである(後述)。

永世中立国の例

永世中立国の例を挙げる。

スイス:1815年のウィーン会議でイギリス・フランス・ロシア等から永世中立が保証されている。

オーストリア:1955年に永世中立宣言、主要国との交換公文により成立。列強によって中立化させられたとも言われる。

トルクメニスタン:1995年国連総会にて承認。

以上の3ヶ国。以下の5ヶ国は宣言しているに留まっている。

ラオス、カンボジア、モルドバ、リヒテンシュタイン、コスタリカ。

中立国(局外中立国・戦時中立国)

中立国は永世中立国とは違い、周辺国の合意のもとでなされる条約を結んだ状態で、戦争をしている国のどちらにも味方しない公平な態度をとる。

北欧の事情:ノルディックバランス

スカンジナビアクロス(国旗の十字架のこと)の国々のバランスを示した言葉。

ノルウェーとデンマークはNATOに以前からいるアメリカ寄り、スウェーデンは中立、フィンランドはソ連寄りの中立という均衡状態で、北欧の平和を表している。

スウェーデンは中立国

スウェーデンはナポレオン戦争後には中立の方針をとっていたが、ナポレオン終結直後にデンマーク=ノルウェーとの交戦があった。なお現在のスウェーデンは女性にも徴兵制がある。スウェーデンはあくまでも「中立政策」を取ってきただけで、中立国ではない。

歴史を紐解くと1914年 第一次世界大戦、1939年 第二次世界大戦 ともに中立。しかしベルギーのように中立を宣言しながら侵略された国もあるため、偶然とも考えられる。

中立化

中立化は中立の政策を取るという意味。

例えばフィンランドは前述のスウェーデンとは背景が違う。

1918年にロシアから独立し、第二次世界大戦ではソ連との冬戦争。1941年当時の枢軸国ドイツの助けを受けてなんとか独立を維持。立場的には敗戦国となりながらも自由政策を維持、絶妙な中立政策によって西側・ソ連との関係を維持してきた。この冷戦下で議会制民主主義・資本主義を維持しながらソ連の意向に反しないように進められた対外政策をフィンランド化(中立化)と呼ぶ。

従って2022年NATO加盟において同系列に語られるスウェーデンとフィンランドであるが、両者とも事情が異なっているのである。

日本は?

オーストリアがそうであったように第二次世界大戦での敗戦国である日本は日本の中立化は当然試みられた。

1949年にはマッカーサー氏が「日本は極東のスイスたるべき」と発言、1951年のサンフランシスコ講和会議及びその後の1958年でソビエトが日本の永世中立化を提案している。

1950年警察予備隊。朝鮮戦争中にアメリカ軍が不在となることから、日本国内を革命組織から守るために結成。1952年に保安隊となり、1954年に日米相互防衛援助協定を結び自衛隊となる。つまり米軍基地が存在するだけでなく集団的自衛権が行われる状態であることも含め、日本は中立からは程遠いのである。

武装中立と非武装中立

繰り返し述べているが、中立=軍隊がない、では断じてない。

むしろ中立を維持するためには抑止力の意味も含め、非常に強力な軍隊が必要となる。例えばスイスも強力な軍隊を持っており、それは前述の通り中立を保つためには他国からの侵略から自力で守り必要があるためだ。

スイスは第二次世界大戦中においても中立を維持するため、領空侵犯する全ての軍用機に対して迎撃する措置をとった。

非武装中立国 コスタリカ?

コスタリカは1983年に時の大統領ルイス・アルベルト・モンヘ大統領が永世非武装中立を宣言している。しかし現実的には常備軍がないだけで非常時には徴兵制を敷き軍隊を組織することができる。また国家警備隊が武装組織となっているという現実もある。

またアメリカに安全保障を依存していることから集団的自衛状態で、中立国とは言えない状況なのである。

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このように中立とは絶妙なバランスの上で成り立つ、非常に難しい立場なのである。永世中立国も必ずしも平和とは限らないのである。

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