【NATO】力は国際連合以上?北大西洋条約機構(NATO)の結成経緯について

image 12 - 【NATO】力は国際連合以上?北大西洋条約機構(NATO)の結成経緯について 地政学

世界史や現代社会の授業で習うNATO(北大西洋条約機構)。高校卒業していればこの名称を耳にしたことがあることになるが、その実態は細かくは習わない。ニュースとかでの解説も表面的で、なんとなくアメリカや西欧の組織っぽい、ぐらいは伝わってくる。

今回はそのNATOの中身と、なぜできるに至ったかの解説と今後何が起こっていくのかの考察をしていく。

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NATOとは?

まずはNATOが何なのか振り返ろう。

NATOはNorthern Atlantic Treaty Organizationの略で、北大西洋条約機構と和訳される軍事同盟で、アメリカやイギリス、フランス等が加盟。重要なのはいわゆる「西側」の軍事同盟ということ。

設立は1949年(12ヶ国)で2022年3月の時点で30ヶ国にまで膨れ上がっている。同時期の事務総長はイェンス・ストルテンベルグ元ノルウェー首相。

2021年の推計で加盟国軍隊は332万人、加盟国30ヶ国の国防費総額は1兆485億ドルと推定される。

世界史の授業では対比してソ連を中心とした東側「ワルシャワ条約機構」を習うのだが、そちらは解散済みである(後述)。

北大西洋条約の概要

まず北大西洋条約機構に紐づく北大西洋条約の要点を見てみる。

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目的(前文)

①国連憲章の目的及び諸原則への信頼と平和裏に生きることへの希望を再確認

②自由、共通の生得権、及び人民の文明を擁護

③北大西洋地域の安定と福祉の促進を追求

④集団的防衛並びに平和及び安定の維持のための努力の統合を決意

第5条

欧州又は北米における一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす。締約国は,武力攻撃が行われたときは,国連憲章の認める個別的又は集団的自衛権を行使して,北大西洋地域の安全を回復し及び維 持するために必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び共同して 直ちにとることにより,攻撃を受けた締約国を援助する。

第10条(加入)

締約国は,全会一致の合意により,本条約の諸原則を促進し北大西洋地域の安全保障に貢献することができる他のいかなる欧州の国を本条約に加入するよう招請することができる。招請されたいかなる国も米国政府に加入書を寄託する ことにより本条約の締約国になることができる。米国政府は各締約国に当該加入書の寄託を通報する。

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外務省のウェブサイトからの転載であるが、わけがわからない訳になっているところもある。

これまでに治安維持活動(コソボ、アフガニスタン等)、海洋安全保障やサイバー防衛などグローバルな課題に対応する。

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NATOの加盟国

NATOを知るためにはその加盟国とその年次、加盟していそうでしていない国を把握することが重要である。これがわかると帰納的に組織の概要を察することができる。まずは加盟国から。後述する歴史的背景を読むと、なぜこのようなタイミングで加盟し、拡大して行っているか納得することができる。

加盟国

【原加盟国】

アイスランド、アメリカ、イタリア、イギリス、オランダ、カナダ、デンマーク、ノルウェー、フランス、ベルギー、ポルトガル、ルクセンブルク(12ヶ国)

【1952年加盟】

ギリシャ、トルコ

【1955年加盟】

西ドイツ

【1982年加盟】

スペイン

【1999年加盟】

チェコ、ハンガリー、ポーランド

【2004年加盟】

エストニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア

【2009年加盟】

アルバニア、クロアチア

【2017年加盟】

モンテネグロ

【2020年加盟】

北マケドニア

加盟していない国

第二次世界大戦で中立をしていた国であるスイス、スウェーデンは入っていない(スウェーデンは加盟予定)。スイスは2002年まで国連にも加盟していなかった。スペインが比較的新しいのも同じ理由で、独裁政治が終わり王政に戻り加盟。オーストリアは第二次世界大戦後に中立化されたため。

フィンランドも非加盟(加盟予定)。ロシアと長い国境を面しており、第二次世界大戦の初めにソビエト連邦に侵略されてなんとか追い返したため、後継国であるロシアに脅威を抱いているためと考えられている。

セルビアはボスニア紛争、コソボ紛争の際にロシアに助けてもらった経緯があるためと考えられる。

ボスニアは国内の民族問題が解かれていないためと考えられる。コソボは独立したばかりのため。

参考だが、NATOは加盟国以外と同盟等の関係を結んでいる。

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Wikipediaより。

なおNATOから距離があるように見えるロシアも、NATOに入りたがっている(いた)ウクライナも「平和のためのパートナーシップPfP」に属するため、NATOとの関係性については同じ立ち位置ということになる。

NATOはなぜできたのか?世界史的な解釈

元はフランス VS ドイツ?(プロイセン・オーストリア)

ヨーロッパの歴史を振り返るとフランスとドイツは常に戦争をしている。以下を見てみよう。

 1494-1559年 イタリア戦争

 1618-1648年 ドイツ三十年戦争

 1701-1713年 スペイン継承戦争

 1740-1748年 オーストリア継承戦争

 1796-1815年 ナポレオン戦争

 1870年 プロイセン・フランス戦争

 1914-1918年 第一次世界大戦

 1939-1945年 第二次世界大戦

歴史の教科書でも出てくるが、抑止的に働かせる目的で作られたのがEC(現EU)である。

第二次世界大戦後

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※WTOはワルシャワ条約機構(東側諸国のソ連を中心とした軍事同盟)

知らない人はまずこの表を理解してほしい。一部は割愛したが、特筆すべき国・地域の戦後の状況をまとめた。現代社会を理解する上で非常に重要である。

あえて表に記載したバルカンとトルコ・ギリシャ。これらの国はヤルタ会談の際にルーマニア・ブルガリアは東側陣営、トルコ・ギリシャは西側陣営と密約があったとも言われる。

さて、具体的に見ていこう。

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第二次対戦後の欧米とNATO結成

ヨーロッパの西側はアメリカ、東側はソ連の息がかかる。大戦中はアメリカとソ連は同じ連合国側で枢軸国という共通の敵がおり、特段仲が悪いわけではなかったと言われる。大戦直後も特別戦ってはいなかった。

1946年のフルトン演説。アメリカミズーリ州フルトンのウエストミンスター大学で社会主義が大嫌いなチャーチル(イギリスの元首相)が有名な鉄のカーテンの演説を行った。

「バルト海のシュテッティンからアドリア海のトリエステに至るまで鉄のカーテンが大陸を横切って下されている」と述べ、ヨーロッパの東西分裂を表した。ここから冷戦が始まったとも言われる。

1947年、アメリカ大統領トルーマンはトルーマンドクトリンとマーシャルプラン(戦後で破壊されたヨーロッパ復興のための経済的支援)でヨーロッパに大量の資金を入れる。受け入れた国は以下の通り。

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オーストリア、ベルギー、ルクセンブルク、デンマーク、フランス、西ドイツ、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スウェーデン、トルコ、イギリス(、ユーゴスラビア)

Wikipediaより。

ソ連側はコミンフォルムによる経済支援。ユーゴスラビアは東側陣営ながらマーシャルプランを借りてソ連と距離を取る。チェコもマーシャルプランを借りようとしたが、チェコ共産党がクーデターを起こして完全に東側陣営に落ちる。

チェコのような小さな国が東側に落ちたことから、ベネルクス三国(ベルギー・オランダ・ルクセンブルク)を陣営から離さないためイギリスとフランスと共に西ヨーロッパ連合条約を作る。対するソ連はベルリン封鎖を行う。西ヨーロッパ条約にアメリカカナダ等7ヶ国が加わり、北大西洋条約機構を作る。このように共産化を防ぐために作られたのがNATOである。対するソ連はワルシャワ条約機構(WTO)を設立する。

NATOと緩衝地帯

ドイツは緩衝地帯として働いていたが、西ドイツがNATOに加盟、一方ソ連は東ドイツを含めてワルシャワ条約機構を作った。このように緩衝地帯がなくなった。

しかし時代は巡って1991年、ソ連のゴルバチョフはワルシャワ条約機構を解散。NATOも解散する約束だったと言われるが残ったままとなる。これが問題だ。ソ連が崩壊していることもあり、ウクライナだけでなく、ポーランド、スウェーデン等は緩衝地帯として再度働くようになる。

注目すべきは、2004年のNATO東方拡大である。前述のように旧ユーゴスラビアやその他バルカン半島の国々だけでなくバルト三国も加盟を果たしている(エストニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア)。このように結果的にロシアは孤立を深めていく。

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EU MAGより。フィンランド・スウェーデンはNATOにも加盟予定。)

残された課題

前述のようにゴルバチョフがWTOを解散したのにNATOは残った。これが一つの課題である。かつてはロシアもNATOへの加盟を求めたというが、2022年4月現在のように孤立を深めたロシアはあらぬ方向へ向かう。

世界秩序を守る組織である国際連合の安全保障理事会は機能していない。一方、現在はないが、過去にはNATOが世界の紛争に関与してきた事例も多くある。何より、NATOには核保有国が3ヶ国もあり、国連安全保障理事会にも負けずとも劣らない。

NATOはそのくるものを拒まないという姿勢のようで、さらに膨張していく可能性もある。強大な資金力のある国も複数あり、国際連合に変わり国際秩序の中心組織になっていることは間違いない。その一方で中国・インドという強大な力がまだ世界には存在しているだけでなく、イスラム圏もこの世界秩序には黙っていないだろう。

新たな国際秩序の形成が望まれる中、NATO・中国・インド並びにイスラム圏、そして日本がどのような形でリーダーシップを取っていくか、期待も懸念も多すぎる。

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