「え、１時間待ち！？こっから志布志の民宿は２時間ぐらいかかるよね・・・ちょっと駐車場に入って作戦会議していいですか？」
私たちは今回の旅の大きな目的地の一つである、鹿児島の右側の半島（つまり、鹿児島がカニだとしたら左手側、鹿児島を掴むとしたら右手側に当たる方）の先っちょの岬を目前としたところでプチ絶望していた。カナシミブルーだぜ。
時刻は16時になろうとしている。ここ、佐多岬に行くためのここの駐車場はガラガラに見えた。しかしながらここは最寄りの駐車場ではないらしく、駐車場で誘導をしてくださっている方によると佐多岬の最寄りの駐車場まで自動車で１時間、徒歩で45分とのことだ。
最寄りの駐車場が混雑しているとのことであり、まぁ仕方がない。健脚揃いの私たちは歩く覚悟を決めた。今16時。健脚補正をして歩くのに35分として岬に着くのが16時35分、滞在30分で17時05分、帰路は甘く見積もって17時半、買い物を終えて宿に着くのが19時半から20時。まぁなんとかなろう。そんな都合の良いどんぶり勘定をする。正常性バイアスだ。
青色のド派手なジャスティを適当に停めて、一応歩ける格好に準備をする。
「面倒臭いなー」
誰かが呟く。もしくは4人中3人が呟く。
歩くことは体力の問題ではなく精神力の問題だ。だが今回の旅のハイライトでもあるここをすっぽかすわけにはいかない。
＊ ＊ ＊
佐多岬に行こうと思ったのはウェブで計画を4人で打ち合わせしているときだった。
「種子島の後、鹿児島観光しよう。この右下の半島って何があるんだろう」
「さぁ。左側は指宿とか枕崎とか聞いたことあるよね」
「右側が南端だよね。行ってみたくない？」
「行く行く！」
「何があるんだろうね」
「さぁ。そもそもこの半島って名前なんだろう。岬もわかんないな」
「何があるのか確認しに行こう」
海外の地名はバンバン出てくるしポイントも抑えているのにも関わらず、日本のこととなると半島の名前すら出てこない。そんな感じのまま、あっという間に旅程に盛り込まれた。
＊ ＊ ＊
この旅は、私の場合、種子島に（無駄に）3泊したのち、鹿児島に4泊する記録的長さとなるものであった。
今回の舞台は5日目、フェリーターミナルのほど近くにあるグリーンゲストハウスでナミビアを共に旅した友人とばったりと再会したのち、それは置いておいて、鹿児島市内-霧島神宮-桜島埋没鳥居-荒平神社-謎の大仏-佐多岬-志布志市泊と流れた日のことである。
とはいえ鹿児島市内-謎の大仏はいつか別のページに譲ることとしよう。
ということで謎の大仏を見られなかった（月曜日に当たってしまい施設がお休みだった）こともあり、自称ペーパードライバーの友人の運転で佐多岬に向かった。
前述のように佐多岬最寄りの駐車場まで１時間かかることにプチ絶望した私たちは歩く準備をする。
「じゃーいきますかー」
「ちょっとお手洗い」
「あれ、シャトルバスじゃない？いけるんじゃない？」
ということでお手洗いに行かせる隙もなくシャトルバスのところに向かった。
「乗れますか！？」
「さっきの青い車ですね。四人、いいですよ、こちら代表者の方ご記入をお願いします」
「え、やった」
ラッキーなことにシャトルバスとやらに乗れてしまった。絶妙なタイミング。料金は往復一人200円とリーゾナブル（というか駐車場等含めてマネタイズをしましょう）。
「帰りは17時ですからね、遅れないでくださいね」
シャトルバスに乗って佐多岬先端に向かう。片側一車線の道は乗用車で埋まっており、動く気配は全くない。対向車側の車線をシャトルバスが向かった。シャトルバスの優遇っぷり。
「これは・・・確かにクルマで１時間かかるね」
シャトルバスは連なるクルマたちをごぼう抜きにしてあっという間に岬の最寄りの駐車場に着いてしまった。これなら歩いても30分もかかるまい（実際歩いていないのでGoogle等で時間はお調べください）。
案内所でお手洗いを済ませ、先に向かう。駐車場での情報によると岬までは15分とのこと（実際は5〜10分ぐらいかな）。
トンネルを抜ける。
頑張って半島の端っこまで来たのに加えて、ラッキーシャトルに乗られて、向こう側が白く輝くトンネルを抜けるなんて気分はもうウレシミレインボー。ワクワクが止まらないね。
＊ ＊ ＊
この1年弱で種子島の南北端、礼文島の北端、宗谷岬、潮岬、犬吠埼、そして佐多岬と踏んできた（他の島でも行ったと思うが思い出せない）。
海流がぶつかるところだったり、風を遮るものがなかったりと最果てを感じることも多かった。
今日の佐多岬は晴れ、穏やかな風。今年の旅は穏やかにできますように。
佐多岬からクルマを出してちょっと走ったところに、「宗谷岬 2,500km」と気の利いた標識があったんだとか。
端っこにはロマンがあるのだ。
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