旅にアクティビティは必要だ。登山するとなると荷物が増えるし、スキューバするとなると飛行機の制約や気持ちの持ち方が問われる。しかし、そんな大変なことを度外視したとしてもアクティビティは入れたい。旅によってはそれがメインだ。
山に登ったのと登っていないのとではその後の充実感や後で語れるものが違うのだ。汗を流せば濁り切った心が多少浄化される気がするし、失恋とかした場合にはちょっと誤魔化すことができる。単純に楽しいというのもあるのだけれど、そんな副次的な効果、いや、どちらが副次的かわからないのだけど、だから僕たちは登る。
そういうわけで佐多岬に行った僕たちの翌日の予定は開聞岳だ。
宿の予約の都合上、翌日朝から開聞岳に登る予定なのになぜか志布志の民宿に宿泊することになってしまっていた。まぁコスト勝負で一泊3000円台に押さえていたので仕方がない。
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開聞岳は公式サイトによると上り3時間、下り2.5時間の合計5.5時間のコースタイムだ。私たち四人とも健脚揃いのため8がけして4.4時間ぐらいだろうか。まぁ10時に登り始めたとして1時間休憩したとしても常識的な時間に降りられる。余裕だ。
南大隅から指宿への朝一のフェリーは9時発。つまり半島を跨いでの通勤は想定されていないようだ。僕たちは7時発を目指してちゃんと朝起き、ブルーのジャスティでフェリーターミナルに向かう。女子も男子も、僕以外の三人は朝からカップ麺を食べている。よく食べて健康だこと。
カーナビとグーグルマップの案内を対峙させてカーナビを無視しながら僕たちは大隅半島の山道を抜ける。アルゴリズムとか情報の量とかが違うのは認識しているがここまで精度が違うのはいかがなものか。ビッグデータを取るのだ、カーナビ。
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朝っぱらから1時間以上クルマを走らせると8時すぎぐらいにフェリーターミナルに着いた。ターミナルというか、小屋だ。根占港というらしい。生活感がある。まぁ船が止まればなんら問題はない。僕たちが来た時にはもはやクルマが10台ぐらい止まっていたのに、次々とクルマが来て20台ぐらいだろうか、フェリーに乗るのか危ぶまれるぐらいの数になってしまった。見たところキャンピングカーもいるがほとんどは乗用車だ。サイクリストもいる。まぁ生活者がメインで、一部観光客といったところなのだろう。こんな移動をするなんて変わった観光客もいるもんだ。
クルマを所定のところに並べると整理担当の方がおいでになり「4m」と書かれた紙を渡してくる。それを受け取り、クルマから出て手続きをする。通常フェリーにクルマを乗せるときは車検証を見せるのだが、今回の手続きでは何もなく先程の「4m」の紙を渡して所定の金額を支払いおしまい。これでいいのか、フェリーなんきゅう(公式サイト)。
「どうやって長さ測ったんだろ」
「絶対適当だ」
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何もないフェリー乗り場でぼーっと時間を潰し、再び全員でクルマに乗り込んでフェリーにクルマを収納する。準ペーパードライバーにはなかなかな運転だ。そしてよくもまぁこんなたくさんクルマを詰め込めるものだ。
「詰め込めなかったらどうするんだろう」
「次の便かなぁ。そしたら計画台無しだよね」
味気なく出発する小型のフェリーは大隅半島を離れ、開聞岳が聳え立つ薩摩半島へと向かう。全体としては晴天であるが開聞岳の上の方には雲が見られる。やっぱり登ったらガッスガスなのかな。
反対側には噴火ショーをする桜島。
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フェリーは1時間で薩摩半島に着いた。他にも個人的な精神的な理由はあったのだけど、眠たくもなくて何もしない1時間というのは無常に長い。
僕たちはクルマに乗り込んで順番に降り立った。カーナビを設定していなかったため早速誤った方向にいく。当たり前だけど勘では目的地に着かない。
動き出したばかりで適当な向きを示すカーナビに悪態をつきながら、僕たちは開聞岳を目指す。
まずはガソリンを入れる。まだ借りて二日目だというのに移動距離がすごかったから仕方がない。燃費が悪くないクルマでよかった。なお今回の旅で知ったのだが、沖縄や鹿児島の島々では「わ」(「れ」)ナンバー車、つまりレンタカーはガソリン代が割高となるらしい。けしからん。
ガソリンを入れて開聞岳もよりのファミリーマートで昼食を購入する。僕は遅い朝ごはんとしてパイの実パンを食べる。こういった企画モノにはほとんど手を出さないけれど、今回ばかりはなんとなく購入してみた。まぁデニッシュだな。
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最後一息、一番登山口の近くと思われる駐車場までジャスティを走らせ、山に登るべく体勢を整える。さあ、登ろう。
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