端っこにはロマンがある。
旅人である以上、ポルトガルのロカ岬でユーラシア大陸の最西端を感じてみたいし、南米のパタゴニアにも行ってみたい。そんな願望こそあれ、現実には喜望峰ぐらいしか行ったことがない。
喜望峰は素晴らしい晴天に恵まれたが波が強く端っこを感じた。かつてバスコ＝ダ＝ガマ氏が難所としていたことも肯ける。ポルトガルのロカ岬は話に聴くと何もない上、かなり荒れるようだ。そういえば昨日の礼文島の岬も風が強く大荒れだった。
とにかく端っこというのは荒れやすいようだ。確かに会社の端っこの席もなんとなく荒ぶっている気がする。
そんなのことはどうでもいいのだが、端っこにはロマンがあるのだ。
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ということで北海道の最北端、稚内の宗谷岬もきっと荒れるのだろう。ろくにテレビを見ないし事前に全く調べていないのだが宗谷岬もいつも曇っている気がする。勝手な先入観で宗谷岬さんに失礼なこと極まりない。
礼文島から稚内にどんぶらこと降り立った私たちは昨日急遽予約したトヨタレンタカーのバスにピックアップしてもらう。
「利尻島や礼文島もそうだったけど、稚内もフェリーターミナルめちゃくちゃ綺麗じゃない？」
そうなのだ。最近行った島のフェリーターミナルはどこも綺麗だ。おまけに言ってしまえば伊豆大島や三宅島のフェリーターミナルもびっくりするぐらい綺麗だった。
トヨタレンタカーでパッソを借りると我々は宗谷岬に向かう。稚内での滞在時間はたった3時間であるが、宗谷岬往復であれば十分だ。
「やっぱり本土って感じがする。コンビニはたくさんあるし、駅も大きいね」
そんな間の抜けた話をしながら北上していく。
案外礼文島は道路幅が狭く、道がクネクネしておりアップダウンもあったため運転しやすくはなかったが、ここ稚内は平で真っ直ぐで走るのにもってこいだ。
私はペーパードライバーではあるがこういう時に運転できて良かったと思う。都内は危ないから運転したくない。
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何故か私がずっと運転することになったが別に嫌ではない。昨日まで借りていたインプレッサやマーチとは違い、可愛らしい走りだ。インプレッサは走り出しの時にエネルギー感があり、サッとした爽快感があった。そういう意味では当然ながらマーチに近い。
そんな自動車に乗らない私の感想はどうても良いのだが、宗谷岬への道は海の真横ではあるのだがキラキラした海がずっと見渡せるほどの近さではない。ある程度内側でないと冬場は凍りついたりして危険なのだろうか。
Siriさんに「元気になる曲」なんてリクエストをしてアブリルラヴィーンのなんとかという曲を聴きながらパッソは走る。いわゆる北海道のだだっ広い道というほどでもないがスピード感がなくなる感じがする。行ったことがないため勝手な印象だが美瑛だか富良野だかで飛ばし過ぎて事故ると聞くのもわからなくはない。
「あれ、さっきのゲストハウスの看板、Uターンして3,000kmとか書かれていなかった？」
「え、よく見なかったけど日本列島って3,000kmぐらいだから沖縄ってことかな。機転の聞いた宣伝だね」
「あのガソリンスタンドって有名な最北端のやつかな」
「え、興味なさ過ぎてわからない」
そんなことを言いながら何事もなく宗谷岬に辿り着く。
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ここでの宗谷岬はイメージとは裏腹に最高に良いコンディションだった。青空に映える海は美しい深い青だ。
「最北端の地」と書かれたモニュメントに並ぶ。
私たちの前にはチャリダーがいた。自転車とともに写真を、そして自転車だけで写真を撮る。私にはわからないが、チャリダーにとって最高の達成感があるんだろう。帰るのは大変なんだろうな。
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「帆立ラーメンを食べよう」と我々はコンセンサスを取り、先に歩いて進む。そこには噂のガソリンスタンドがあり「日本最北端のガソリンスタンド」と書かれていた。そこに止まっていたミニが可愛らしい。いろんな楽しみ方があるもんだ。
ガソリンスタンドの真後ろの坂を登ると大混雑のラーメン屋さん「間宮堂」があった。
「ラーメンは北に行くほどうまくなる」とのこと。
そこに名前を書いて並ぶ。30分ぐらい待っただろうか、最高の帆立ラーメンを食べた。
日本本土の最北端の地はとても平穏で、青く、穏やかで、美しいところだった。
やはり端っこにはロマンがある。
そこには東京まで何キロとか書かれた看板、戦争関係の碑があったりした。
「宗谷岬公園、もっとしっかり楽しむ？」
「あ、（面倒くさいから）大丈夫」
と総意だったようでレンタカーに戻った。空港まではフェリーターミナルよりも近い。
「じゃあ、帰ろうか」
日本本土最北端からひとっ飛びすることにした。
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