【剱岳(1)】剱岳登山記録。焦がれる北アルプスと遠い立山へ。

DSC08628 scaled - 【剱岳(1)】剱岳登山記録。焦がれる北アルプスと遠い立山へ。 旅行記

・・・ようやく辿り着いた。

気がつけば涙が溢れてきた。

一つ、目標を超えたような気がした。それだけ、ここ、剱岳には猛々しい魅力がある。

* * *

ーーーまた台風だ。

毎シーズンのことながら、何度経験しても計画が狂わされる腹立たしさがある。この前の週は北アルプスに台風が来るという予報で、関西遠征を余儀なくされた。結果的には楽しかったから良いものの、理想として描いていた輝かんばかりのご来光の果てに見える白馬岳をはじめとした後立山連峰に盛り上がってくる雲海が、山深い紀伊山地の奥地になるのは描いていたものとは違いすぎる。一緒に登る仲間がいなかったらまず選ばなかった。

7月には僕が体調を壊して目標としていた鹿島槍に行くことができず蓼科山に変わり、それはそれで非常に良かったのではあるが、どうしようもないやるせなさが僕の中に渦巻いていた。

他の人のアップする絶景写真を見るのが辛く、インスタグラムもしばらくログインをしていない。実際仲間が「剱岳に登った」とか「パノラマ銀座縦走した」とかそんな話をうんざりするぐらい聞いた。

一方で僕も北海道山行の話をするのだが、北アルプスに今季行っていないという欠落感とも敗北感とも捉えられるドス黒い何かが腹の中でのたうち回る。友人の話を聞くたびに先シーズンにアタックした奥穂高岳・北穂高岳の岩陵地帯のスリルがフラッシュバックされる。この漠然とした焦りのような感覚を排除するためには北アルプスに行くしかない。

ーーーそうだ、夏が終わってしまう。行くならこの機会しかない。

2022年の上期が終わる、この金曜日に休みをとり、北アルプスへ強行することにした。

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Day 0:新宿→夜行バス(→富山駅)

Day 1:富山駅→(鉄道)→立山駅→(ケーブルカー)→美女平→(バス)→室堂→剣沢キャンプ場

Day 2:剣沢キャンプ場(3:36AM)→前剱(4:46)→剱岳(5:51)→剣沢キャンプ場(8:37)→室堂→信濃大町→新宿(19時ごろ)

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マイカーを持たない僕にとって山へアクセスするバスをいつ取るかが課題だ。天気なんて3日前でも外れるし、だが3日前だとバスのキャンセル料がかかってくる。いいビジネスだ。

だから3日前までは公共交通機関は確定させず、とりあえず五竜に行くつもりでいた。だがしかし9月末の平日は唐松岳のロープウェーの運行開始が8時と山行に影響ありな時間な上、そもそも八方尾根までのバスがないことが判明した。

一瞬絶望したが、それで吹っ切れて潔く「(キャンプ場予約いらないし)剱岳に行こう」となった。

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立山は遠い。

まず立山に行こうとして最初にぶち当たる問題としてアルペンルートの富山から入るか長野から入るか。いずれにしても遠い。しかし僕は昨年仲間たちと富山側から長野へのアルペンルートを経験していた。その経験から勝手がわかっていたこともあり、また乗り換えの手間と移動時間の合理性を踏まえて富山側から入ることにする。

この浮足だった木曜日は昼間仕事を必要以上にテキパキとこなし(?)、自宅から新宿までうんざりするような体積・重量のザックを背負って鉄道を乗り継ぐ。今日は早く着きすぎることなく、円滑に夜行バスに乗ることに成功した。不愉快なさくら観光の夜行バスについては特に言及することはあるまい。

新宿から富山まで夜行バス、そこから鉄道で立山駅、ケーブルカー、バスと乗り継いで室堂に行くことにした。

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バスタ新宿。落ち着かない。

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立山駅でケーブルカーを乗るまでに2時間程度かかった以外はスムーズに室堂に着いた。立山駅では待ち時間に蕎麦を朝食として食らう。

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立山駅でのケーブルカーチケット売り場。金曜日なのに1時間待ち。
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室堂のターミナルは平日にも関わらず賑わいがあり、土曜日に来なくて良かったと思う。

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室堂。朝の池袋かよ。

今日の空は雑誌の表紙になるにしても雲があった方が絵になる、と思うぐらい澄み渡っている。

昨年来た時は、今回の幕営予定地でもあるキャンプ場にたどり着くまで終始日光を乱反射する液体がヒューム状に舞い続けており、みくりが池だかなんだかは全くお目にかかれなかった。天気が曇っていると他の記憶も曇るようであり、剱御前小屋までどれだけ大変だったかの記憶も特になかった。しかし今年来てみるとなかなかな急登であり、さっぱり忘れていた。

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テントにチェアにカメラに三脚、そしてヘルメットとフル装備の60Lのザックはなかなか荷重がかかる。そして標高が2,000メートル以上と高いこともあって一歩一歩が重い。しかし振り返って見える草紅葉に染まる立山を見ると来て良かったとつくづく思う。

「今日どちらまで行かれるんですか?」山人夫婦に聞かれた。

「今日は剣沢までで、明日剱登ります。ちょっとビビってます」

「去年行きましたよ、一箇所怖いところがありますが、そこさえ乗り越えれれば大丈夫ですよ、楽しんできてください」とエールをいただいた。

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2時間ほど歩いただろうか、剱御前小屋の前で昨日コンビニで調達しておいたパンとおにぎりを食べる。さつまいもクリームパン、美味なり。そういえば前回来た時はここにオコジョだかなんか小動物が見えたとかでわちゃわちゃしていたっけ。

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剱御前小屋を超えたら30分ほどで剣沢キャンプ場に着いた。室堂から3時間弱、10時半ごろに室堂を出て13時過ぎには剣沢についていた。

平日とはいえテント場にはざっと見て30以上のテントが村を形成し、良い場所は押さえられていた。明日とかだったらテント張るのがやっとだったかもしれないと考えると金曜日に無理に来て良かった。

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サッと幕営し、お茶をしながら本を読む。タンパク質ターゲットとな、うむうむ、科学者が語る食欲、(前半は)良書。

そんな優雅な時を一人過ごした。

続く

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