化学性食中毒とは食品の原料などに本来含まれないはずの有害化学物質が汚染や生成などによって発生する中毒です。全食中毒中の1%程度と頻度も少ないですが、時に事件の形でニュースに取り上げられます。
今回はこれら化学性食中毒のうち、ヒスタミンと酸化油脂、ダイオキシン類について見てみましょう。
化学性食中毒とは
化学性食中毒とは前述のように食品に本来含まれてはいない有害化学物質が原因で発生するものです。
全食中毒の1%、最近30年間では死者は出ておりません。2008年〜2017年の10年間の発生件数は138件、患者は2,644名。発生している化学性食中毒の主たるものはヒスタミンを原因とするアレルギー用食中毒で、前述の期間での発生件数の77%、患者数の90%に相当します。
残りの32件のうち、変敗油脂によるものが2件、非常に問題となった中国産冷凍餃子のメタミドホス混入事件が2件、保存容器からの溶出による銅によるものが1件。洗剤や消毒剤、漂白剤などの混入や誤用などによる人為的ミスが25件です。2件が原因不明。
アレルギー様食中毒
アレルギー様食中毒は赤身魚に含まれるヒスタミンが原因でアレルギー症状に類似した中毒症状が見られるのでこの様に呼ばれています。
ヒスタミンと赤身魚
アレルギー様食中毒を理解する上で、ヒスタミンとは何なのかを理解する必要があります。
ヒスタミンとはアミノ酸の一種であるヒスチジンが変化したものです。具体的には脱炭酸されることでヒスタミンとなります。ヒスタミンは食物アレルギー、花粉アレルギーなどの症状の原因でもあり、かゆみの原因でもあります。
赤身魚はこのヒスチジンというアミノ酸を筋肉中に多量に含んでおり、それが微生物の働きによってヒスタミンとなります。
なお、なぜ赤身魚かというとヒスチジンの量が700〜1,800mg/gとヒラメなどの白身魚が〜数10mg/100gと桁違いの量を含んでいるためです。
ヒスタミンはやや辛い。ちょっとピリピリしたら注意が必要。鮮度が高そうでも食べないほうがいい。
魚類アレルギーとアレルギー様食中毒の違い
魚類アレルギーとは違います。魚類アレルギーは特定の魚などを食べてなるもの。このアレルギー様食中毒と似ているのですが、ヒスタミンを直接摂取してしまって発症するという意味で異なります。なのでアレルギーを体質として持たない人でもアレルギー様の食中毒になってしまいます。
一方、魚類アレルギー等の食中毒とは異なるアレルギーは摂食した自分自身の免疫系の細胞であるマスト細胞や好塩基球が作り出すヒスタミンによって発症します。こちらはアレルギー体質の方が発症してしまうものです。
すなわち、免疫系が関与するかどうかの違いです。
中毒発生状況
1951〜53年ごろにサンマのみりん干しによる集団食中毒で発生。それが原因でヒスタミンによるものだと明らかになってきました。
現在でも毎年10件ほど発生し、200名ほどの患者を出しています。マグロ・カジキ・サバ・イワシが原因となっており、刺身、干物、缶詰など原因も様々です。
ヒトへの影響
食後数分〜30分ぐらいで発症し、顔面、特に口の周りや耳たぶの紅潮、頭痛、蕁麻疹、発熱などの症状が出ます。だいたい6〜10時間で回復し、死亡することはありません。
一食あたり22〜320mg以上の食品を食べると発症するとされています。
対策として5℃以下の低温で中毒の防止に効果的ですが、低温でもヒスタミンを産生する菌はいますので完璧ではありません。
酸化油脂(変敗油脂)
油脂は空気中の酸素・水などの影響で主成分であるトリグリセリドが加水分解され、脂肪酸が遊離します。この脂肪酸が空気中で酸化されて味や匂いが悪くなり、粘度も高くなります。
これを油脂の酸化または酸敗・変敗と言います。この過程でヒドロキシペルオキシどやその分解物のアルデヒドなどは有毒であり、そy区中毒の原因になります。
過去の事例
最初の大規模な食中毒は1964年。大阪府など2府3件で発生しました。メーカーの即席焼きそばで69名が下痢、吐き気、嘔吐、頭痛、脱力感などの症状が出ました。その後も即席ラーメンやせんべい、ポテトチップスによる中毒が見られました。
しかし、現在は脱酸素剤や包装技術が目覚ましく発展しており大幅にその件数が減少しています。2008〜2017年の10年間で2件(87名)となっています。
ダイオキシン類
ダイオキシン類とはポリ塩化ジベンゾジオキシンとポリ塩化ジベンゾフラン、コプラナーPCB(二つのベンゼン環が同じ平面上にあるPCB(ポリ塩化ビフェニル)。PCBの中でも特に毒性が強い)のこと。
ダイオキシン類は非常に安定な物質であり、環境中で分解されにくく残留する傾向にあります。発生源はゴミや産業廃棄物の焼却炉で発生量の半分以上を占め、残りは製鋼用電気炉、タバコの煙、自動車の排出ガスなど。また有機塩素系農薬に不純物として含まれていたことも。
ヒトへの影響
実験動物に対して強い急性毒性、発がん性、催奇形性、免疫毒性など。環境中や食品中には微量しか含まれておらず、ヒトにおけるリスクは限定的と考えられています。
なおダイオキシンの一日摂取量はTDI(耐容一日摂取量)である「4pg−TEQ/kg体重/日」を超えたことはありません。魚介類からの摂取量が最も多いと考えられています。
※TEQ: Toxic Equivalency Quantity「毒性等量」。毒性が明らかになっている29種類のダイオキシン類について、最も毒性の強い2,3,7,8-テトラクロロジベンゾジオキシンの毒性を1とした時の値
予防対策
ダイオキシン類は300〜400℃の塩素源があれば焼却時に生成、800℃以上では分解。
現在では800℃で2秒以上燃焼でき、排ガスを200℃いかに急冷できることが焼却炉に定められています。これにより焼却炉由来の1997年と比べて2015年にはダイオキシンの発生量が100分の1程度になっています。なお、総発生量もこの間で70分の1程度になっています。
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