前回はアメリカから見た地政学を考えてきました。
今回はロシアの立場から考えて見ましょう。
前回のアメリカ編からお読みください。
地政学の中のロシア
ロシアは地政学的には「ランドパワー」です。その名の通り、陸の力。アメリカを海洋国家としてみた「シーパワー」の対義的表現。
広い北極海に面していますが、それは凍ってしまって船は通れない。不凍港の獲得を目指して南下して行くのがロシアの昔からの行動原理です。
海は必要です。陸運はとにかくコストも時間もかかる。
特にシベリアのような巨大な土地を持っているので、ロシアは国土全体を管理する上で極めて重要。
確かに中心はヨーロッパ側ですが、たとえコストがかかってもロシアはアメリカや中国、日本を牽制する意味でも極東地域も当然手放せない。
昔から頑張って南下政策を取ってきた結果、現在ロシアは7つの主たる不凍港を持っています。
そ、たった7個。
ロシアの三つのルーツとアイデンティティ
ロシアは三つのルーツがあると言われています。
一つ目が9世紀にノルマン人が建国したノヴゴロド国。ゲルマン人の一派なのでロシア人に「自分たちは西欧人だ」と思わせる。
二つ目がキエフ公国のスラブ人。スラブ人は東方正教が多く、アイデンティティともなる。
三つ目がモスクワ大公国。ビザンツ帝国を引き継いで、モンゴル支配に打ち勝った国。モンゴル系遊牧民は強い上、中央アジアとの結びつきが強い。
凍らない海が欲しいロシアとそうはさせないイギリス。
ご覧いただいてわかるようにロシアとアメリカはほとんど陸続き。
アラスカはアメリカがロシアから1871年に破格で購入した(なんと2016年の貨幣価値で1億2300万ドル!!)のは有名で、当時は批判されたけれどもその後は金脈が見つかったり。
19世紀にはイギリスがロシアを封じ込めようとグレート・ゲームを展開してました。
上述のようにロシアは不凍港が欲しくて西へ南へ東へ。ロシアの南下を抑えるためにアフガニスタン取り合ったり、ロシアが地中海に出られないようにボスホラス・ダーダネルス海峡を抑えてクリミア戦争したりと争いを繰り返していました。
ウクライナは譲らない。
ロシアとウクライナは兄弟といってもいい。むしろキエフ公国にアイデンティティを求めるのであればウクライナはルーツとも言えるかもしれない。
ウクライナは東ウクライナにロシア系が多く、西ウクライナはカトリックが多くEU寄りです。
ロシアはウクライナが欲しい。セバストポリという黒海の重要な軍港があるから。肥沃な黒土地帯だから。鉄鉱石が取れるから。
現在もバタバタしているクリミアですが、1954年にロシアからウクライナに移管されています。クリミアをウクライナに渡した当時のソ連大統領フルシチョフはウクライナで暮らしていたことがあります。「クリミア地域とウクライナが経済の共通性、近接性および密接な経済・文化的関係」があったとのこと。しかしながらクリミア地域はロシア系住民が多く、争いは絶えません。
なお、ロシアはウクライナに相当ひどいことしてます。
真偽は不明ながら2008年、当時首相だったプーチンは「ジョージ、わかっちゃいないな。ウクライナは国ではないのだよ」(“Ukraine is not even a state.”)とか言ったとか(こちらなど)。
新しい航路:北極海航路
こちらはまだ可能性です。
温暖化で北極海の氷が溶けて船が通れるようになる、っていう話。
過去に実績はあるらしいですが、実用化まではいたっていないみたいです。
Wikipediaより。
スエズ運河とかマラッカ海峡とかチョークポイント(地政学的に見て重要な地帯)をかなり飛ばせるため、航期が大幅に短縮できる。
ここのサイトにわかりやすくまとまっていました。
北極海での資源開発に関しては北極海評議会の8カ国(アメリカ、ロシア、カナダ、ノルウェー、デンマーク、アイスランド、フィンランド、スウェーデン)のうちアメリカ、ロシア、カナダ、ノルウェー、デンマークが北極海会議とかやって残り3国で大論争となっているとか。
まとめ
ロシアはとにかく不凍港が欲しい。
イギリスはそれを阻止したい。
ここもランドパワーとシーパワーの争いってことです。
南極に関してはこちら。
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