さて、この旅の最終的な目的地は五島の福江だ。熊本から入って天草、島原、長崎へ行き、船で五島に渡るというご当腹めず3泊の旅である。時間が許せば熊本に泊まって復元中の熊本城を見たりとか馬刺しざんまいという選択肢もあった。だが今回の旅のメンバーでは基本的に街には行かない。そういう生き方なのだ。
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天草といえば天草島原の乱で中学生の時に教科書で学ぶ地名だ。天草四郎さんがいたりとか隠れキリシタンがいたりとか歴史の舞台としてはなかなか興味深いところだ。
海外旅行に行けず腐り切った私たちは島に向かうのだが、その全段で天草にいる。半島だって半分は島なのだ。そんなことを考えながら暮れゆく2020年が残り5日になった。
国内旅行は朝が遅いことが多い。しかも自動車だから柔軟な対応ができてしまうから良くない。
ということで7時ぐらいに起きて朝食をいただく。
「ちゃんとした朝食ってやっぱりいいね」
本当にそう思う。普段は食パン2枚や菓子パンをコーヒーで流し込むというエネルギーが取られればいいんでしょ、というひどい生活であるため、旅先の朝食は本当にありがたい。
朝食を食べながら今日のプランを確認する。
「まず崎津天主堂へ行って、昼過ぎぐらいに島原半島に渡って雲仙に入る。で、ちょっと観光して、スーパーで買い出して、2回目の忘年会をする」
素晴らしい。これまで私の旅といえばダイビングをしたり山を登ったりとアクティビティがメインだったが今回の旅はほとんどそれがない。よって食べることが中心となる。
泊まっていた民宿を後にして崎津天主堂に向かう。私たち三人とも理系出身であるためこの辺りの知識はほとんどない。皆日本史より肌で体験した世界史の方が断然詳しい。
ゆりかもめのように円を描いて勾配を作る天草市街の巨大な橋を渡って南下する。さぞコストがかかっただろう。天草瀬戸大橋というらしい。
「親が香川出身で、瀬戸大橋ができたときは四国が本州と一体化したということで歴史的なことだったみたい」
友人の一人がいう。今となってはしまなみ海道など複数の橋が四国と本州を結んでいるが、そういうことなのだろう。一人ではそういうことに気が付かないが友人の一言で、橋で結ばれる前の四国の方々に思いを馳せた。
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天草市街の巨大な橋を渡って南に降り一時間半ぐらい走っただろうか、海と山が入り組んだ地形が見えてくる。
「天然の両港って感じがするね」
出張で行った大船渡のことを思い出す。そことは違うが、リアス式海岸のような複雑で入り組んだ地形。成り立ちは違うが印象としてはミルフォードサウンドも遠くはない気がする。
そんなふうに走っていくと教会の標識が見える。その標識に向かっていき、商店街のような古い街に入る。
「あ、ここだね」
なんとなく何もないところに突如として現れると思っていたが、古い街の中、海の近くに津崎天主堂はあった。
私たちは誘導されるがままに無料の駐車場に止める。全くお金が発生しないというのも問題だ。そして教会に向かう。
教会は想像よりも小さく、和洋折衷といった感覚だ。クリスマスの名残のような装飾があってとても可愛らしい。歴史はここでも作られ、戦国の世の中が加熱していく理由を作っていったんだろう。新しい文化に直面した時、人は受け入れるか、それとも拒絶するか。新しいものを異分子としてみなすの今も過去も変わらない。
昔はそこに暴力が生じたが、今は生じないだけで、結託して異分子を叩くのはTwitterやらが出てくるなど形は変わるが本質的なところは大して変わらないのだろう。
多様性とも言われる現代になったが、多様性が認められているのは一部のみで、公共の福祉やら同調圧力、なんとなく引かれたレールやらで結局多くの多様性は潰される。
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一円も落とさないまま博物館、マリア像、展望台と満喫した私たちは天草を後にして島原半島へ向かうことにする。
「この後、お城があるからそこにいきつつ、ご飯食べて、フェリーで雲仙に向かおう」
私たちは天主堂を後にする。
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