キプロスという島国がある。
トルコやイスラエルにほど近いが、エーゲ海に浮かんでおり、EUに加盟しユーロも使えるし、中東とは異質であるためヨーロッパということになろう。いや、その考えは正しいのだろうか。
キプロスという国
キプロスという国をご存知だろうか。エーゲ海に浮かぶ島国で面積は四国の半分。地中海(エーゲ海)に浮かぶ島では三番目の大きさで、シチリア、サルデーニャに次ぐ。
多くの独立国家が登場した年の1960年に独立。
2017年のゴールデンウィークにキプロスを訪れた。
ドバイ経由でキプロスのラルナカへ行くことができ、他のヨーロッパに行くのと大した違いはない。
しかし、ここでいうキプロスとはいわゆる日本が認めた国家としてのキプロスであり、南半分を指す。南はギリシャ系の住民が多く、言語的には歴史的経緯から英語も使用可能であるが、ギリシャ語がメインのようだ。
北部はトルコが実効支配というのだろうか、別国家として機能している。日本は北のトルコサイドを国家として認めていないため、北で何かトラブルが起こっても日本は助けてくれない。
国境をまたいでいるため通貨も違う。北部はトルコリラ、南部はユーロ。
ギリシャ神話のビーナスことアフロディテが入ったと言われる湖がこの国にある。ギリシャとの繋がりがわかるだろう。
マップを見ても真ん中に線が引かれていることがかるだろう。点線が二重となっているのはグリーンラインと呼ばれているもので、北キプロスと南キプロスの軍事的衝突を防ぐために国連が引いた空間。
そして東側のデリケアおよびアクロティリ近くはイギリスの領土のままになっている。
なんとキプロスに軍は9種類。
こんなキプロス島には9種類の軍があるとか。
(1)キプロス正規軍
(2)ギリシャ系国民志願兵
(3)トルコ系国民志願兵
(4)ギリシャ本国軍
(5)トルコ本国軍
(6)ギリシャ系国民右派軍 EOKA
(7)中道系警察予備隊←マカリオスがEOKAに対抗するために作った
(8)イギリス軍
(9)国連軍
異常。これだけ軍隊が共存しているが、現在の治安は極めて落ち着いている。
EUに加盟している南側の方が経済的に発展。北は南と一緒になってもいい、って声も最近は上がっているともいう。
またトルコは北キプロスを実効支配していると見られているため、トルコがEUに加盟できない理由の一つになっている。トルコがEUに加盟できない理由はこれだけではないのだが。
ギリシャ語でニコシア、トルコでレフコーシャ。分断された首都。
この島の首都はギリシャ語ではニコシア、トルコ語ではレフコーシャ。首都のど真ん中に国境があり、壁で分断されている。私は南から入ったため、北での宿泊は認められず、24時間だかで南に戻らねばならない。
ここで初めて陸の国境をまたいだ。
正直、驚いた。南はヨーロッパ。とはいっても石畳が綺麗に整備されているヨーロッパ都市ではなく、正直美しい感じはしない。しかしショッピングストリートが整備されており、スタバだってある。路地はおしゃれだったりする。ビザンツ様式のイコンが展示されている博物館、正教会の流れが確かにある。
その一方で国境をまたいだ北。そこにいる人はトルコ人だし、正直街も物寂しい。市場もヨーロッパのそれとは違ったし、何より教会ではなくモスクの存在感が大きい。
当然、トルコにはオスマン帝国前からの歴史的な流れがあって、イスタンブールやイズミルなど美しい街もたくさんある。ヨーロッパ的が正しいわけではないが、このキプロスではヨーロッパサイドから入ったためだからか、中東と欧州のコントラストが際立つ。
南から入る場合、国境を越えるのはとても簡単。スタンプもなければ紙もない。24時間以内に戻れば良い。それだけ。
ただ日本のパスポートのすごさに驚かされるばかり。その一方で北から入るのは難しいようだ。北にある国際空港に入るのもトルコ経由になるのだろう。
日本も島国であるが国境の分断はない。ほぼ単一民族で、日常で民族を意識すること機会も私の場合はない。しかし、このニコシアでは国家維持の難しさや文化・宗教的価値観の違いを考えざるを得ない。
南キプロスはイギリスの基地が多かったり、ロシアのハワイと言われるリゾート地があったりと美しい街が多い。幾つもの都市を訪れたが、海沿いの街は開発されていて保養地となっているのも頷ける。パフォスには遺跡も多い。
北キプロスへのツアーもある。そちらも遺跡は多いようだ。
なおニコシアの街はこのように分断されている。
ニコシアの国境にて。
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