【世界遺産2】世界遺産条約と関連する8つの憲章と条約

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世界遺産は世界遺産条約に基づいて世界遺産リストに記載されている「顕著な普遍的価値」を有する自然や生態系保全地域、記念建造物、遺跡。

1978年に最初に12件が登録され、2020年3月で1,121件となった。

そんな世界遺産条約とそこに関わる国際条約や検証をご紹介する。

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世界遺産条約(世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)

世界遺産条約は萩原徹日本政府代表が議長を務めた1972年の第17回ユネスコ総会にて採択された国際条約。世界遺産基金への支払いを義務とするかどうかで意見がわかれたが、賛成75ヶ国、棄権17ヶ国、反対1ヶ国で可決。

1973年にアメリカ合衆国が最初に世界遺産条約を批准、1975年に締約国が20か国となり発効。1978年に最初の世界遺産12件が世界遺産リストに記載された。2020年には193ヶ国となった。

1978年に最初に世界遺産リストに登録されたのは下記。

アーヘンの大聖堂(ドイツ)・・・786年に初代神聖ローマ帝国の皇帝・カール大帝が作り始め、それ以来神聖ローマ帝国の戴冠式が行われた場所。ここにカール大帝の遺骨が眠る。

クラクフの歴史地区(ポーランド)・・・ポーランド文化の中心。第二次世界大戦で被害を受けなかったことから歴史的建造物が多く残る。ヴァヴェル城、聖マリア教会など。ヴァヴェル城の中庭はルネサンス風で、ヴァヴェル城を構成する建物はロマネスク・ゴシック・ルネサンス・バロック風など様々な建築様式のものがある。

ヴィエリチカとボフニャの王立岩塩坑(ポーランド)・・・ヴィエリチカ岩塩坑は1044年開業でヨーロッパで最も古い。深さは327m、全長300km以上。1989年に換気が悪く岩塩のモニュメントにダメージがあるとして危機遺産リストに加えられたが、環境改善で1998年に危機遺産リストから外れた。ボフニャの岩塩坑は1248年頃開業でヨーロッパで最も広い。

シミエン国立公園(エチオピア)・・・エチオピア最高峰でアフリカ大陸で五番目に高いラス・ダシェン山(標高4,620m)などの高山があり「アフリカの天井」と呼ばれる。ワリアアイベックスを保護する目的で国立公園となった。1996年に4,000m地帯に暮らす人々による農地拡大による環境の悪化、エリトリア独立をめぐる環境悪化から危機遺産リストに登録されたが2017年に危機遺産リストから除外。

ラリベラの岩の聖堂群(エチオピア)・・・凝灰石を削って作ったエチオピア正教会の公会堂の一つ。サグウェ朝のラリベラ王時代である12世紀から13世紀に作られたと考えられている。

ゴレ島(セネガル)・・・奴隷貿易の拠点。モスクもある。

メサ・ヴェルデ国立公園(アメリカ)・・・コロラド州南西部に位置するプエブロインディアンのアナサジ族が残した断崖をくり突いて作った集落がある。

イエローストーン国立公園(アメリカ)・・・アイダホ州・モンタナ州・ワイオミング州に位置する国立公園。間欠泉が有名。グリズリー、バイソン、ワピチの群が存在している。

ランス・オー・メドー国立歴史公園(カナダ)・・・ニューファンドランド島最北端にある。グリーンランド以外の北アメリカで唯一のヴァイキングの入植地として知られている。

ナハニ国立公園(カナダ)・・・ヴァージニア・フォールズは落差がナイアガラの二倍の90m。ナハニは先住民デネ族の言葉で「精神」の意味。

ガラパゴス諸島(エクアドル)・・・「ゾウガメの島」の意味。ダーウィンが種の起源の着想を得たことで有名。

キトの市街(エクアドル)・・・16世紀に南米へのキリスト教布教の拠点となる。

参加が遅れた日本

日本では世界遺産条約が1992年に発効。理由として

・日本は独自の文化保護体制があった

・国内法の整備や分担金の支払い方法が決まらなかった

ことが挙げられる(それに20年もかかったという日本らしい)。

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世界遺産条約に関わる条約・憲章など

アテネ憲章(歴史的建造物の修復のためのアテネ憲章)

1931年にアテネで開催された第一回「歴史的記念建造物に関する建築家・技術者国際会議」で採択された検証。

記念物や建造物、遺跡などの保存・修復に関する基本的な考え方を初めて明確に示した。

・修復の際はいかなる時代の様式も無視せずに過去の歴史的・芸術的作品を尊重すること

・その存在意義の継続を維持しながら使用すること

・記念物や建造物をその存在意義の継続を維持しながら使用すること

・歴史的建造物を親権的な保護下に置くこと

・保存の助言を行う機関を設立すること

・記念物や建造物を尊重する教育の重要性

などが謳われている。

修復の際に近代的な技術と材料の使用を認めている点が世界遺産条約と異なっている。

ハーグ条約(武力紛争の際の文化財保護に関する条約)

1954年にユネスコが採択、1956年に発効した条約。国際紛争や内戦、民族紛争などから文化財を守るための基本方針を示している。

1954年、1999年の議定書で武力紛争時だけでなく平時においても文化遺産や美術館、図書館を保護することを義務付けている。

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ヴェネツィア憲章(記念建造物および遺跡の保全と修復のための国際憲章)

1964年に開催された第二回「歴史的年建造物に関する建築家・技術者国際会議」で採択された検証。

記念物や建造物、遺跡などの保存・修復に関する検証。

・芸術作品・歴史的証拠として保護すること

・修復の際には建設当時の工法、素材を尊重すること

・推測による修復の禁止

・修復の際には歴史的に誤解を与えないように修復箇所を明らかにすること

・修復の際に不可避な付加工事があった場合にはそれが後から補ったものであることを明示すること

考古科学・歴史学的な検証が必要で、オリジナルの材料や色調、建築環境などを可能な限り保存することが求められる(真正性の概念につながる)。

真正性を検証する機関として1965年にICOMOS(International Council on Monuments and Sites; 国際記念物遺跡会議)が設立された。

伝統的な技術が明らかに不適切である場合のみ、近代的な技術を用いることができる(姫路城では礎石が店主の重量を支えきれないため昭和に鉄筋コンクリート性の基礎構造物に置き換えられた)。

文化財の不法な輸入、輸出および所有権譲渡の禁止ならびに防止の手段に関する条約

1970年の第16回ユネスコ総会で採択された条約。1972年に発効。盗難された文化財の密貿易などを禁止。

加盟国は

・文化財の認定や目録の作成

・文化財保護のための機関の設置

・不法に輸出された文化財の復旧を保証する加盟国間の協定の締結

・摘発ための国際協力

・残遺の購入者への補償

・教育活動

などが求められる。

ラムサール条約

1971年にラムサール(イラン)で開催された国際会議で採択。

水鳥の生息地を保全するために

・湿地の生態系と生物多様性を保護し、調査、保全のための措置を取ること

・湿地を持続可能な範囲で適正に利用するために計画を立てて実行すること

が定められている。

ストックホルム宣言(人間環境宣言)

1972年に開催された国際連合人間環境会議で採択された宣言。国際社会が初めて開発問題と環境保全について取り組み、その原則についてまとめた。

国際連合人間環境会議において文化遺産と自然環境を保護保全する条約づくりが進められ、ユネスコ総会にて世界遺産条約としてまとめられた。

公的または私的の工事にとって危機にさらされる文化財の保存に関する勧告

ヌビア遺跡群の救済活動を受け、1968年の第15回ユネスコ総会で採択された勧告。社会的・経済的な発展による変化との調和を図りながら保護して公開することなどを各国の義務として求める。

世界遺産に関するブダペスト宣言

2002年に出された宣言。国際協力のもとで世界遺産の顕著な不変適期価値を守り、世界遺産が持続可能な社会の発展に貢献するために4つのCが示された。2007年ニュージーランドで行われた第31回世界遺産委員会では5番目のCが付け加えられた。

この「5つのC」とは世界遺産条約履行の戦略目標となっており、世界遺産委員会において世界遺産センターは一年間の活動を「5つのC」分類に当てはめて報告している。

5つのCとは

 Credibility(信頼性)・・・世界遺産リストの信頼性

 Conservation(保存)・・・世界遺産の適切な保護・保全

 Capacity-building(能力開発)・・・世界遺産に関わる人材の育成

 Communication(コミュニケーション)・・・世界遺産の価値や理念を広めること

 Community(コミュニティ)・・・世界遺産の保護に欠かせないコミュニティ

のこと。

歴史的都市景観の保護に関する宣言

2005年10月の世界遺産条約締結会議で出された宣言。

2005年5月にウィーン中央駅界隈の都市開発と世界遺産の保全をめぐりオーストリア政府やウィーン市、世界遺産委員会事務局、ICOMOSなどが参加した国際会議が開かれ、「世界遺産と現代建築に関するウィーン覚書(ウィーンメモランダム)」が採択されたことを受け、「歴史的都市景観の保護に関する宣言」が採択された。

歴史的都市景観の概念を推薦書等の保護計画に含むことを推奨。世界遺産の顕著な普遍的価値の保護はどんな保護方針や運営方針よりも中心に据えられるべきであるとしている。

世界遺産におけるボン宣言

2015年の世界遺産委員会にて採択された宣言。IS(イスラム国)や武将集団による遺跡の破壊を非難するとともに国際社会の協力を呼びかけた。

イラク、シリア、イエメンなどの武力衝突による遺産破壊、ネパールでの地震災害などを念頭においている。

世界遺産条約履行に関する戦略的行動計画(2012-2022)

2011年の世界遺産条約締約国会議で採択された行動計画。

締約国が共有する目標として

・世界遺産の顕著な普遍的価値の維持

・世界遺産リストの信頼性の向上

・環境・社会・経済的な要求を考慮した世界遺産の保護・保全

・世界遺産のブランド力向上

・世界遺産委員会の行動力強化

・世界遺産条約の決議の公開と実行

が定められた。

* * *

今後も文化財や自然保護に関する動きは続いていくはずです。そして世界遺産は増え続けるのでしょう。

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