【世界遺産5】世界遺産条約の概要とそれによって設置された機関

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「世界遺産とは、地球の品位を守るもの」。京都大学名誉教授だった桑原武夫氏が1980年にボロブドゥール寺院の修復完成式典について語った際の言葉。

世界遺産は1972年の第17回ユネスコ総会で採択された世界遺産条約から始まり、1975年に締約国が20ヶ国に達して発効。2020年3月の時点で193の国と地域となった。

そんな世界遺産条約と関連する機関について紹介する。

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世界遺産条約の中身

世界遺産条約は8章32条からなる条約。

コンテンツとしては

1章:文化遺産及び自然遺産の定義

2章:文化遺産及び自然遺産の国内的及び国際的保護

→国内の文化遺産や自然遺産を認定・保護するのは締約国に課せられた第一の義務。他国内の遺産保護活動に対する国際的援助、良力も求められる。

3章:世界の文化遺産及び自然遺産保護のための政府間委員会

→21の締約国からなる世界遺産委員会の設置。世界遺産リストと危機遺産リストの作成。

4章:世界の文化遺産及び自然遺産保護のための基金

→ユネスコの信託基金である世界遺産基金の設立。資金は世界遺産委員会の決定によってのみ用いられる。締約国は2年に一回定期的に世界遺産基金に分担金を支払うことを約束する。(国際社会全体の義務として、遺産の保護・保全に協力すべきである。)

5章:国際的援助の条件及び態様

→締約国は自国領内の遺産のために国際的援助を要請することができる。世界遺産委員会は研究や技術の提供、専門家の要請、資金の貸与や供与などの援助をすることができる。

6章:教育事業計画

→教育や広報事業計画などあらゆる手段を用いて、自国民が世界遺産を評価し尊重できるように努める。国際的援助を受けた際には、対象となった遺産の重要性や国際的援助の役割を周知させる。

7章:報告

→締約国はユネスコ総会が決定する期間に行った活動報告を世界遺産委員会に通知する。世界遺産委員会はそれをユネスコ総会に提出する。

8章:最終条項

世界遺産条約への加入、廃棄、改正についての規定。

世界遺産条約履行のための作業指針

世界遺産条約履行のための作業指針は1977年の第一回世界遺産委員会で採決されており、4年の周期で改定される他、常に更新されている。

作業指針では世界遺産リスト作成の根幹である「顕著な普遍的価値」の定義や登録基準、真正性、完全性の定義の指針を示す他、スケジュールなどの実務的な指針、世界遺産基金の基準に基づく国際援助や保全状況などの手続き、世界遺産委員会諮問機関や関連機関、関連条約といった履行上の関連事項、世界遺産のエンブレムの使用規定まで細かく示されている。

世界遺産条約締約国会議

世界遺産条約締約工区会議は世界遺産条約を採択した全締約国による会議で、2年に一度開催されるユネスコ総会の会期中に開催される。第一回は1976年ナイロビ。

世界遺産基金への分担金の決定や世界遺産委員会委員国の選定、世界遺産委員会から世界遺産条約締約国会議とユネスコ総会に対して提出された活動報告書の受理を行う。

世界遺産委員会

顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産保護のための政府間委員会、通称「世界遺産委員会」。世界遺産リストへ登録推薦された遺産に対して「登録」「情報照会(3年以内の再提出が求められる)」「登録延期(再提出から一年半の審議)」「不登録」の決議を行う。

一回の世界遺産委員会での審議件数は35件まで。

当初は締約国の中から選ばれた15ヶ国で構成されていたが1977年の第一回世界遺産委員会からは21ヶ国に増枠。任期は6年だが自発的に4年で終えること、再戦を自粛することが望ましいとされている。

通常1年に一回開催される会議には諮問機関であるICCROM(文化財の保存及び修復の研究のための国際センター)、ICOMOS(国際記念物遺産会議)、IUCN(国際自然保護連合)の代表者や締約国の要請により政府間機関、NGO代表も顧問として出席することができる。

世界遺産委員会はビューロー会議を設置する。ビューロー会議は7ヶ国で構成される人気一年の会議で、世界遺産委員会の進行や作業日程の決定を行う。世界遺産委員会の最終日に次回の世界遺産委員会のビューロー会議構成国が決定される。

世界遺産委員会事務局(世界遺産センター)

世界遺産委員会を補佐する役割で1992年に設置。パリのユネスコ本部内に常設されており、世界遺産センターの局長は世界遺産委員会の秘書となる。

役割は世界遺産リストへの登録推薦書を受理し、専門調査を依頼すること、世界遺産条約締約国会議と世界遺産委員会の開催・運営を行うこと、決議の履行や実施頂上の報告、定期報告の取りまとめ、国際援助の調整、予算外資金の確保、広報。

世界遺産基金

顕著な普遍的価値を有する世界の文化遺産及び自然遺産の保護のための基金、通称世界遺産基金。

ユネスコの財政規則に基づいて1976年に設立された信託基金で世界遺産条約締約国のユネスコ分担金の1%を超えない額の拠出と任意の拠出金や寄付などが財源。

締約国や2年に一度拠出金を支払わなければならず、延滞する場合は世界遺産委員会の委員国に選出される資格が得られず、緊急援助以外の国際的援助を受けることができない。

世界遺産基金は世界遺産委員会が決定する目的のみに使用することができ、多くの場合は途上国の登録推薦書作成、保護管理計画書の作成、専門家の調査、自然災害や紛争からの復興に充てられる。

世界遺産委員会や締約国はこの世界遺産基金の拠出に際していかなる政治的な条件もつけることができない。

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