【涸沢カール】自然の優美。雪渓残る初夏のテント泊の涸沢カールへの登山

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「絶景・・・!!」

日本で見た景色で最も美しかったといっても過言ではないかもしれない。

これまでも白馬岳、常念岳、御嶽山、仙丈ヶ岳といった日本アルプスや八ヶ岳やその他の山々を幾ばくか登ってきてそれぞれ感動してきたが、それらを抜いて美しかったかもしれない。

奥穂高や北穂高に登るほどの体力や時間的余裕がないことが本当に嘆かわしい。

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梅雨が明けるか明けないかという7月の半ばに登山を計画することは賭けである。登山を計画しては流れたり行きたいところに行けず変更したりとしたことは何度もある。

9月は台風が来るし、サラリーマンは本当に思ったように山に行けない。

行こうか行こまいか悩んでいたのだが、ひょんなことから7月17日-18日にテント泊で涸沢カールに行く機会に恵まれた。昨年も涸沢カールは計画したのだがうまくメンバーが揃わずやむを得ず違う山に日帰りへと変更した。

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今回はメンバーを改めての3人のパーティ、このメンバーで登るのは初めてでちょっとドキドキする。私はいつものように数日前からテントに詰めるものを部屋の脇におもむろに並べ準備をし始める。75Lのアコンカグアのザックを使うのは確か1年経たないぐらい、利尻島に持っていって以来。金峰山・瑞牆山はテント泊で行ったとはいえ、ちゃんとしたテント泊登山は2年ぶりだ。

そんな初心状態の私にとって、涸沢カールはリハビリを兼ねてちょうどいいと考えた。

一年前にルートを調べて以来、大して調べ直しておらず、正直余裕だと思っており、ビールのロング缶やみんなで食べるお菓子、水、食器といったものをトレーニングを兼ねて持ってきており、ザックは想像以上に重たくなっていた。

私は無理矢理獲得した在宅勤務を定時に終えて近くのスーパーに買い出しへ行き、前日の準備を整え、集合場所である柏駅に向かう。初めての柏だ。

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「この流れは去年の焼岳以来だ」

去年の焼岳の時と同じようにまたしても私たちは塩尻北ICの信州健康ランドで仮眠をとり、上高地バスターミナルに向かう。仕事上がりで本当に疲れている中、柏から長時間運転していただいたお兄さんには本当に感謝だ。私より後に登山を始めたはずなのに経験も情熱も私を悠に超えており、体力も精神力もすごく強く、敬服。

上高地バスターミナルからまんまとタクシーに乗せられた。3人でのタクシーは金額的にはバスとほとんど変わらないため非常に楽でありがたい。アルピコ交通の運転手としてもバスに余分に人を乗せるよりも合理的か。

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透き通るブルーの梓川を左手に、私たちは涸沢カールへと歩き始める。

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明神、徳沢を通る定番ルートだ。前情報、というか一年前に調べた淡い私の記憶によると涸沢カールまでは最初は平坦な道、最後2時間ぐらいは登って大変。ぐらいの感覚だ。

その消えゆく記憶の通り、最初は余裕だ。

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辿り着いた明神の山小屋、いやロッヂは本当に美しく、登らずしても泊まりたいと思った。上高地のこの立地ではひどく混雑しそうな気がするが、登山をしない仲間も含めてここでキャンプするのはとても楽しそうだ。

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「ここのソフトクリーム、めっちゃ上手いから後で食べよう」

そんな情報をメンバーのひとりから得る。下りの時に絶対ソフトクリームを食べよう。

「朝飯、食べていい?」

「当然構わないですよー」

ドライバーをしてくださった先輩が食べると言い出したので休憩をすることにする。そこで頼んでいたのがカレー。もう一人のメンバーは氷結を飲み始める。なんと自由な登山だ、最高だ。

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休憩をした私たちは猿たちがいる新村橋を超えていよいよ登り始める。

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最初はペースを仲間達に合わせて歩いていたのだが、私の身体が悲鳴を上げ始めた。登りが、辛い。こんな辛く感じたのは登山を初めてだ。他の人が登るのが辛いと言っているのはこの感覚なのだろうか。

「大丈夫?」

心配する側の方が多い私は心配される側に立ち、仲間の言葉に存外励まされた。

「あ、しんどいです・・・ゆっくり行くので、先に行ってください」

「水、捨てなよ。今日そんなに暑くないし水場あるから大丈夫だよ」

そう助言をいただく。

「わかりました・・・そうします・・・」

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最初は水を捨てずに強がってそのまま登っていたが、ついに水を2L捨てた。以前常念岳から蝶ヶ岳に行く際に水がギリギリとなりヒヤヒヤした経験があり、多めに水を持ってきていた。水を捨てたら体が急に軽くなった。荷物がかなり負担だったことにようやく気がついた。

一つ、学んだ。

* * *

なんと美しい。

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氷河が作り出した涸沢カールの周りの山々には雪渓が残り、青空に白く光る。

絶景を尻目に涸沢ヒュッテに(体力的に)やっとの思いで辿り着いた私は自然の美しさと開放感に溺れそうになった。

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「まずテントを立てよう」

仲間達と適当なテント場を探してテントを組み立てる。雪渓が全面にあり我々の装備で奥穂高たちに行くことはできず、明日降らねばならないことが残念だ。この天気なのだからもっと長くいたい。

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とはいえ、ここから雲海は見られないが、ここからののんびりタイムが最高なのである。

絶景。

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スイカ。

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最高の空気。

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ビール。

(あ、写真がない・・・)

山ごはん。

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星空。

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最高の仲間達と味わう山は、最高だ。

登山の楽しさはピークハントだけではないのだ。

* * *

夜、テントでひとり眠っている時に地震が起きた。

震度はわからなかったが、雪崩が起こっているような音が聞こえた。

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* * *

下りは楽々だ。

私たちは、予定通り徳沢でソフトクリームを満喫した。

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(了)

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