【涸沢カール】気がつけば初のソロキャン!?涸沢カールで山ご飯!と仙人のお言葉。

20210925 DSC04202 scaled - 【涸沢カール】気がつけば初のソロキャン!?涸沢カールで山ご飯!と仙人のお言葉。 エッセイ

奥穂高、北穂高を登って下山した僕は、涸沢小屋のテラスを陣取ってソフトクリームを食す。

それだけでは足らず、なんかお腹が空いてしまって、甘いカフェオレを入れて適当な行動食をわしわしと食べる。そう、お昼を食べていないことを忘れていた。

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下界では甘い飲み物はほとんど飲まないけれど、なんか登山の時は甘いものが欲しくなる。単純に筋肉が動いた後だから糖を欲しているのか、それとも標高、つまり気圧に関係があるのか。いや、気圧は関係ない、組織の酸素の需要は一定のはずだからだ。

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そんなことはどうでもいい。言いたいことは柿ピーではなくチョコレートが食べたいということである。

ふと思ったのだが、これが初めてのソロキャンと言えそうだ。これで僕もミーハーの仲間入りだぜ。僕はこのソロキャンな三日間で、ちっとも読み進まなかった「多様性の科学」というミーハーなタイトルの本を読了した。今をときめく音声メディアであるポッドキャストを聴く。ミーハーだな(5年以上聴いてるけど)。ポッドキャストでは大好きな深夜ラジオや考え方が学べるトーク系の番組を聴いた。デジタルデトックスな空間も必要だ。

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昼寝をしたり、本を読んだりしていたら、すぐに夜になった。いや、まだ夕方ぐらいなのかもしれない。もっと時間を持て余すだろうと思っていたけれど、飛行機や電車の中と一緒で、読書にせよなんにせよ、結局は期待されるほどの進捗はない。

涸沢ヒュッテ脇にある看板を見ると明日の天気は雨、稜線では雪の可能性もあるようだ。明日は帰るだけだし、今日が晴れたからよしとする。とはいえ、気がつけば空は薄い雲で覆われているようで、星は十分にはみられない。

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外は結構冷えてきたから、僕は買ったばかりのダウンジャケットを羽織る。お腹は空いているか空いていないかなんともいえない感覚だったが、今を逃したら晩御飯を食べなくなりそうな気がして作ることにした。そう、山ご飯も楽しみの一つだ。それに、下りの荷物も減らすことができる。

僕は涸沢小屋までわざわざ歩いて、今日はそこでソロキャン飯を作ることにした。

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ここから、重要。

今日のメニュー:ブッフブルギニヨン風スープフィジリ(牛肉のシチュー風スープパスタぐらいのイメージ)

材料。フィジリ、シチューっぽい何か(今回は無印良品のやつ)、コンソメ、トマトペースト、醤油(なくても良い)、にんにくチップ(なくても良い)、水、油(忘れた)

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とりあえずにんにくを炒める。いい香りがしてきたら一回火を止めておきます。シチューっぽいやつとフィジリを入れる。

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次に水をフィジリが浸かるぐらいまで入れて、トマぺ、コンソメ、醤油を適量入れる。

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パスタの標準茹で時間+アルファぐらい茹でて、出来上がり。

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下界で食べたいぐらい美味い。スープも全部飲める量。

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翌朝、テントを撤収するまでは雨は降っていなかったが、下山し始めてすぐに雨が降り出した。本降りと言える強い雨に変わった。

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サクッと下山しおえて、バスまでの間の時間調整・雨宿りのため、上高地ビジターセンターの軒下で一息ついていた。長いような、短いような、久しぶりの一人旅、初めてのソロキャンだった。

そこで、おじいさまに話しかけられた。

「コップある?コーヒーどうですか?」と。

雨に降られて体が冷えていたこともあり、コーヒーを喜んでいただいた。

「ありがとうございます、お茶受けにこちらどうぞ」と、私は腰の低い柔和なおじいさまにチョコ菓子を差し出した。

そこから、どこからきたのか、山にはよく登るのかといったことを聞かれる。話をどんどん聴いていくと、おじいさまは齢77で、松本にお住まいとのことだ。今日は奥様がネイチャーガイドをしていてその間に明神あたりまで散歩するつもりだったが、天気が悪くやめてここで休んでいるとのこと。

話をさらに聴いてくと、保険代理店とコンサルティング会社の双方の社長をしていたかなりのやり手の方のようであった。退職金も辞退し、今は若い者に譲ったと。若い頃は会社勤めで、その時に3ヶ月間会社と費用折半で好きな国に滞在させてもらえる経験をしたと。

「会社でもこういう話をするようによく打診されます。ビジョン、目的、目標を持って生きること。それだけは子供達にも伝えてきた。やりたいことをやってほしい。」と仙人(と言っても髭は生えていないし、喋り方もとてもしっかりしている。年配の方に対する尊敬語の最上位級の表現)は熱っぽく言う。

「やりたいこと、ってわからなくなります。今の仕事が本当にやりたいことなのか。私の場合、社会人になってから海外が好きになって、どうすればいいのかわからなくなることがある」と相談してしまった。きっと、僕は今に満足していない。

仙人は何も答えなかった。おそらく、答えなんてないんだろう。

仙人は時計を見て言った。「今を生きること。それだけを伝えたい。」

よく聴く言葉だった。今ってなんだ、今を生きるってどう言うことなんだろう。本当にわからない。でも仙人が言うと響きが違う。

お名前は伺ったが、名刺も持っておらず、仙人もお持ちでなかったとのことで、それより深入りして連絡先を聞いたりするのはやめておいた。

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一人だから出会えたと思う。こんな出会い、久しぶりだ。

上高地の冷たい雨は、やがて、止んだ。

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