【書籍】強い組織から心理的安全性まで。2021年の必読書「多様性の科学」!

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昨今ではSDGsもさることながら、人権、さらには多様性が尊ばれる世の中である。そんな中で本書は多様性がもたらすメリットを研究・科学した非常によい本であったので共有したい。2021年に読んできた約20冊のビジネス書・自己啓発系の本で最も良かったオススメできる本である。

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多様性の科学の結論

結論から入ってしまおう。本書の結論は集合知を得るためには賢い個人が必要、と同時に多様性も欠かせない。ということである。

その理由が非常にわかりやすく例示されている。

911テロの事例

CIAは何故未然に防げなかったのか?

911テロの前にはアメリカの航空訓練学校に不審な支払いをする者がいる、ビンラディンからムスリムには伝わるメッセージが発信されているといったテロに結び付けられるヒントは散見されていた。

しかしCIAはそれを認識していても点のままで、線として結び付けられていなかった。

本書によると当時のCIAはそのメンバーにかなりの偏りがあった。つまり白人男性アングロサクソンプロテスタント(同類性選好)。

非常にクレバーな人が集められていたことは間違いない事実であるが、「正しい考え方ばかりではなく、「違う」考え方をする人々と協力し合うことが欠かせない。複雑な物事を考えるときは、一歩下がって、それまでとは違う新たな視点からものを見る必要がある」と。

多様性は「人口統計学的多様性」(性別・人種・年齢・信仰等)が認識されやすいが、「認知的多様性」(主義・経験)の概念がある。

魚が泳ぐアニメーションに対してアメリカ人は魚に焦点を当てるが、日本人は背景に焦点を当てる傾向があった。

多様性が欠ける画一的な組織はパフォーマンスが低いだけでなく、もう点も共通しがちでそれをお互いが強化する(ミラーリング)。その結果、不適切な判断や間違った判断にも自信を持ってしまう。周りが賛同する空気であり、自分が正しいと信じてしまう。

イングランド サッカー協会の事例

2016年にイングランドサッカー協会はIT起業家、教育専門家、ラグビーコーチ、士官らを集めて技術諮問委員会を結成した。それぞれの目線・経験からサッカーへの応用ができる組織が作られた。

同じバックグラウンドを持つ知見者のみで構成される場合、個人としては賢くてもその知識が重複してしまう。

チームで難問に挑む際には問題そのもののさらなる精査ではなく、一歩下がって物事を考えること。カバーできていないのはどの部分か、無意識のうちに目隠しをして盲点を作っていないか考えることが重要と説く。

しかし多様性には根拠が必要だ。どんな人が相乗効果を生み出す視点を持った人なのか、それを見つけることがカギとなる。

支配的なリーダー。意見を言えますか?リーダーに意見を言うよりも死を選ぶ事例。飛行機のパイロット、エベレスト登山パーティ。

会議。支配的なリーダーが流れを決め、他の意見が反対意見を言えなくなる。情報カスケード・バンドワゴン効果が起こる。

バンドワゴン効果は「他人の答えを正しいと信じるからではなく、自分が違う答えを出して和を乱す人間だと思われたくないから」ということが明らかになっている。支配的なリーダーや情報カスケードの危険性を示唆している。

リーダーは支配型と尊敬型に分けられる。

尊敬型リーダーの集団の場合は従属者にリーダーの態度がコピーされ、協力的な態度となり結局自分のプラスにもなるポジティブ・サム的な環境が強化される。心理的安全性の高い組織となる。新たな戦略を考えたり、将来を予測したり、イノベーションを起こすときにはこちらの組織が好ましい。

支配型ヒエラルキーではゼロサム環境であるが、何か計画を実行するときに重要となる。

イノベーションの起こりやすい環境

イノベーションは二種類に分けられる。

斬新的イノベーション:その名の通り、ある程度方向性が決まった中で段階的にアイデアを深めていく。生物の進化で捉えると自然選択。

融合のイノベーション:他分野を融合。スーツケースと車輪、電動機と製造機械。生物の進化で捉えると有性生殖。

イノベーションを起こすキーとして第三者のマインドセット、新たな視点が効果的。実際、ピーター・ティール、ヘンリー・フォード、イーロン・マスク等々、名だたる有名な起業家には移民もしくは移民二世が多い。しかし実際に海外に行かなくても異分野の知識を組み合わせることで自身の創造性を高めることもできる。

こうした第三者のマインドセットを持つ方法の一つに「前提逆転発想法」がある。レストランにはメニューがある、ことが前提だが、これをレストランにはメニューがない、とする。この逆転を考えるとアイデアが浮かんでくる。

巨大企業が立ち並んでいたボストンのルート128は垂直統合モデル企業が多く、孤立を招いていた。1970年代、カリフォルニアシリコンバレーでは酒を飲みかわしながらエンジニアたちが自由に交流することが当たり前となっていた。そういった場での考え方や知識が融合したことで人的ネットワークが発達し、また労働市場も開かれていたことも寄与してプロジェクトや起業が起こりやすい環境であったため、シリコンバレーが生まれたと考えられている。

日常に多様性を取り組むための三つのポイント

表題がこのようになっていたのでそのまま記載する。

バイアスを取り除く

男性の方が楽器の演奏がうまいと思われていた。が、選考の際にカーテンを使用したことでこの偏見が除かれた。このように人はバイアスの中で生きている。これをどうすれば取り除けるのか。無意識なのだから難しいのであるが、冷静に考える必要がある。

影の理事会

組織内から集められた有能な若手が上層部の意思決定に意見を述べる。グッチなどが採用。これを日常に取り込めるかは不明。

与える姿勢

 ギバーの方が成功しやすい。自分の知識や創造的なアイデアを共有しようという姿勢でいると見返りが得られる。大成功を収めている人はモチベーション・スキル・チャンス、そしてうまい他人との接し方を持っている傾向がある。

所感

多様性の議論から外れているような印象を受けるところもあるが、それを踏まえても多様性の重要性がわかりやすく議論されており、リーダーシップの特徴などのその形成の方法も書かれている。

当然これまで書いてきたのは一部抜粋の0時であり、実際にはもっとわかりやすく、深く記述してある。再掲となるが、読んで損はないオススメの良書である。

手に取ってみてはいかがだろうか。

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