旅をどう定義するか適当な辞書に当たってもらっても構わないが、それよりも人生を通して形成してきたニュアンスによってそのような曖昧な言葉は解釈すればいい。サイエンスの世界ではないのだから共通認識である必要はない。そもそもサイエンスの概念だって人によって解釈が異なるし、辞書に書いてある文字面の解釈だって読んだ者の人生経験に左右されているのだからどうしようもない。
つまり、特に趣味の領域で他人に影響を与えない範疇である言葉は勝手に解釈すればいいということにする。
そんなことはどうでもいいのだが、今言いたいのは旅という言葉を定義するのはストイシズムと線形性だろう。
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2020年の12月27日はGo To Travelキャンペーンの区切りの日である。
都民であるため出遅れてしまった上、その後のGo To Travelの停止で他の予定が狂ってしまったのはやむを得ないとして、このGo To Travelの恩恵を全く受けなかったわけではない。とはいえ高級旅館には一度も泊まっていない。
この日はGo To Travelを使って友人が手配してくれた温泉旅館に泊まることになっている。温泉旅館だ。とはいえ一泊8,000円ぐらい、もとは10,000円を超える。
「え、8,000円もするの!?めっちゃいいじゃん」
「アパホテルでも8,000円ぐらいしないっけ」
「確かに仕事で使うビジネスホテルも8,000円ぐらいするわ」
とかいう具合。
そんな話をしながら天草から島原へフェリーで渡る。なんとこのフェリー、一時間に一本あるという非常にユースフルな船だ。船というとこれまで本数の問題から警戒しかなかったがこれはなんと便利なことでしょう。両者が経済的にしっかりと結びついていることを表している。なお運行はあの島原鉄道が行っている(時刻表はこちら)。旅客運賃400円、自動車も高く見積もっても3,000円しない(※新型コロナでフェリーの本数が流動的のようなのでWebサイトを閲覧の上で訪れることをお勧めします)。
30分ほど経つと島原半島に着く。先日隠岐で味わった感覚に似ている。
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島原でのホテルは非常に立派で値段を、期待を超えてきた。私たちは荷物を置いてグデっとする。しかし、グデっとしている暇はないのだ、我々は今日中に雲仙の温泉地を満喫して明日の登山の準備をしなくてはいけない。
再度クルマを動かして温泉街の中心地に向かう。途中、温泉が沸いていて霧となっていて前が全く見られないところがあり恐怖を覚えた。
駄菓子博物館に行きたいとのことでとりあえず向かう。好みは人それぞれだ。駄菓子を見て楽しんだが、駄菓子博物館自体は閉館時刻前に店主の方がお閉めになり、融通が利かず入ることはできなかった。
近くのアウトドアショップに行って必要なものがないことを確認する。
得られたのは「雲仙は五時間ぐらいかかる」という情報である。後でわかったことなのだが、これはゆっくり歩いて普賢岳等に登った場合。前情報とは大きく異なっていたが、目の前で言われた以上信じざるを得ない。平たくいって騙された状態となったのだが。
我々は酒屋でGo Toクーポンを使って今宵の忘年会のお酒を買い、デイリーヤマザキで適当に行動食を購入する。
その後に雲仙地獄へ。
「ここすごいね、不毛の地だ」
「地面暖かいよね、温泉沸いているし」
そして取り壊し中の建物がこの雲仙地獄の風景とマッチしていた。
友人が衝撃的発言をする。
「やっぱりここ、来たことある。3年ぐらい前」
「え、そんな最近のことを忘れてたの」
「そう、仕事の接待みたいな感じで連れてきてもらって軍艦島とかも行った。やっぱり自分で動かないと何もわからないね。自分がどこにいるかもわからないとかね」
自分で動かないとわからないというのは完全に合意できるが、自分がどこの観光地に行ったか覚えていないのはなかなかなものだ。
陽が落ちていたこともあり、早々に立ち去ったのがもったいない。
※雲仙の温泉街についてはこちら。
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ホテルの戻って豪華な食事と温泉、忘年会を興じたのは割愛する。翌朝、温泉に入り雲仙に登ることにする。この日は朝起きた時は割と晴れていた気がするが、山に近づくにつれてどんより。
ついてみるとロープウェイが風で止まっているとのこと。八甲田山の時もそうだったが今年は本当に天気に恵まれなかった。雨男は私である可能性が非常に高い。
やむをえず我々は歩くことにする。まずは国府岳。最初は普通の登山道であったが、最後の方は手を使って登らなければならないところ。平日であったこともあり友人は仕事の電話をしたりしながら登っているという状況だ。
しかも天気が好ましくなく、ぬかるんでいる。景色も全くない。
頂上で「カナシミブルー」とか言いながら集合写真を撮った。普賢岳に行こうかと悩んだが、天気が悪い上なかなか難しい道みたいでサクッと諦めた。
「次回の楽しみにしよう」
皆同じ意見だ。なんと気の合う仲間達だ。
帰路、普賢神社についたときには雲が抜けた。
駐車場の反対側の展望所からは海が見えた。有明海だろうか。見える街は諫早だろうか。
そんな感じで2020年の登山は不完全のまま終わっていった。カナシミブルーだぜ。
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