誰だって面倒臭いことはやりたくないし、いつも笑って暮らしたい(たまにそうでない人もいるが)。
人は大勢で作業すると怠け、一人でやるよりも効率が下がることがわかっており、それが「リンゲルマン効果」と言われる。具体的な事例で言うとイベントごとでサボっている奴がいたり、100%の力で動いていなかったりする、そういうことだ。
無意識のうちに「誰かがやるだろう」という考えが働いてしまうことで責任が薄れてしまい、結果的に効率が下がるわけだ。
リンゲルマン効果は本当に起こるの?
御察しの通り、リンゲルマンは人の名前だ。心理学者ではなく農学者。ドイツ人。
1913年にリンゲルマン氏が行った綱引きの実験では、一人で綱を引く時を100%とすると
2人 → 93%
5人 → 70%
8人 → 50%
の力になるという結果が得られた。つまり、集団の規模が大きくなるほど一人当たりの効率は下がる、ということだ。
つまり学校の掃除等、みんなで力を合わせて同じような行為をする場合は一人当たりの効率が下がっているということ。
どう解釈する?
この数字は解釈次第だ。簡単に見つかる数字では上述以上のデータは出てこない。
5人で70%の力となってしまうということは、見方によっては「満遍なく全員が70%程度の力しか発揮していない」とも言える。別の見方をすると「2人が力を半分程度しか出していない」見ることもできる。
組織で物事に取り組む場合、(私のように)当然全力で物事に取り組む人もいる。一方で手を抜く人もいる。後者で考えるのが妥当だろうが、おそらく全力でやっていると思っていても必ずしもそうはなっていない可能性がある。
友人とWebサイトを作るときに「自分がやれば早いけど、まぁいいか」となってしまうようなこともリンゲルマン効果と言える可能性がある。
なぜ人は手抜きをしてしまうのか
なぜ人が大勢になると人は(無意識に)手抜きをしてしまうのか。
当然、無意識に起こってしまうことであるが
・無力感の高まり(一人の力が薄く感じてしまう)
・インセンティブの低下(結果に対する責任が薄れてしまう、評価が希薄化されてしまう)
・監視者からの注意の希薄化(監視者は多くの人を見なくてはいけなくなる)
・「100%の力を出していない人がいる」環境に感じてしまう
以上のようなことが生じていると考えられる。
対策:では、どうすれば手抜きをしなくなるのか
管理者は「人は手抜きをするもの」という前提に立つ必要がある。
管理者は1on1ミーティングをして正当な評価をする、とかそんなのをビジネスの視点だと目にすることがある。果たして、それは実現可能なのだろうか?
視点を変えれば「手抜きをできない環境づくりをする」ことがいいのかもしれない。例えば一人一人の責任のバランスを明確にする(そして見える化する)、手抜きをしたらそれがわかってしまう(結果に現れてしまう)評価のシステムにする、と言った方法だ。
問題があるとすれば、そんな組織で誰も働きたくないということだ。だから、最初に書いたように「人は手抜きをするもの」という前提に立ち、「手抜きをしないようにする」「できないようにする」のではなく、「手抜きをしても大丈夫な組織にする」ことが管理者に求められているスキルかもしれない。
なお、この現象、その道のプロだったり単純に応援されたりすると防ぐことができるとのこと。
閑話休題:コロナウイルス対策もリンゲルマン効果?
コロナウイルスの拡大防止のために政府が「全員で蔓延防止に努めよう」と言っている中、それに乗れない人もいる。それも解釈次第ではリンゲルマン効果と言えるかもしれない。
つまり、「私が対策をしても、対策をしていない人がいる限りは防止につながらないから、私も対策をしない」と行った心理が働いてしまっていると捉えることができるからだ。
これが少人数の社会であれば各々の責任が大きくなるため、各々は責任を持ってコロナ対策に努めるのだろう。
ダブルチェックの敵となるリンゲルマン効果
医療現場のみならず、日常業務でも行われるダブルチェック。そんなダブルチェックをする際にもリンゲルマン効果が起こってしまう。つまり、「二次チェック者がいるから間違えてもいいか」と無意識に考えてしまう心理現象。
ダブルチェックは重要であるが、それ自体が業務になってしまうことも課題。
ちなみに労働安全等の世界ではトリプルチェックはダブルチェックよりも精度が下がるというデータが得られている。チェックは増やせばいいというものではない。
友人と旅行に行って精算結果を見るときも「あの人が見ているから大丈夫」とは思わない方がいいのかもしれない。その人も含めて、精度が下がっている可能性が高いのだから。
参考はこちら。
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