たとえ涸沢までのハイキングだとしても、できれば泊まりで出かけたかった。金曜日の夜発で四人で行くはずだった涸沢だが、友人が一人都合が悪くなったからと予約していた涸沢ヒュッテを急遽キャンセルした。
気分は最悪だ。今年初のテント泊登山ができる予定だったのに流れてしまった。いや、流さないこともできたのだが少し面倒臭くなってしまった。
「土曜の夜から焼岳行こう」
そう代替案を出したところ、他の二人にはすんなり受け入れられた。受け入れられなかったのは提案した私ぐらいだ。
※この時のルートは自動車で「新宿→信州健康ランド(塩尻)で仮眠→沢渡駐車場からバス→上高地帝国ホテルバス停→焼岳→中の湯へ降りる」と行く時の流れです。9月上旬。
* * *
焼岳は上高地にある活火山で北峰と南峰のうち、南峰はガスが出ているということで現在行くことはできない。しかし前泊日帰りで行くことができる百名山のうちの一つだ。東京から上高地はそこまで近いわけでもないため日帰りで行くことはそんなにないため、きっかけとしては悪くないことにした。
急にキャンセルされてしまったためポッカリ開いた土曜日は掃除などつまらないで消費した。きっと土曜日の山は天気が悪くてテント泊なんてもってのほかだったに違いない。
そもそもハイシーズンの土日は少なすぎる。7月は梅雨でリスキーだし、8月の四回程度ある週末のうちの二度は海外に行っていたい。9月になると台風がきやがる。
そんなことを考えながら土曜日の夜に新宿に集合した。仲間の一人が車を持っており、乗せていってくれるとのこと。本当に感謝しかない。
35リットルのスカスカのリュックを車に乗せて、まずは目的地、仮眠する場所である信州健康ランドに向かう。約3時間、休憩入れて4時間。
「健康ランドは目的地になるぐらい居心地がいい。全然寝る時間ないし、暇にしてるならもっと早く集まればよかったね」
その通り。昼間から向かえばよかった。
* * *
健康ランドをものたらないぐらい満喫した我々3人は3時半に起きて沢渡(さわんど)駐車場に向かう。約1時間。朝5時の始発の上高地行きのバスに乗るためだ。
目の前をチンタラ走るトラックにヤキモキしながら沢渡駐車場になんとか着き、バスに乗る。
「上高地帝国ホテル前」で下車すれば焼岳の表側の登山口だ。
帝国ホテル側の登山口はハシゴやガレ場がある登山ルートで、3〜4時間程度とちょうどいい時間でいろんな足場を楽しむことができる。比較的緩やか。途中焼岳小屋があり百名山バッチなどを購入することができる。
なお反対側の登山口は「中の湯」でそこの駐車場まではマイカー規制の対象外であるためマイカーで行くことができるため覚えておくと良い。15台程度が止められる駐車スペースがある。「中の湯」側は急勾配を頑張って登る必要がある。こちらの方が時間的には短いらしいが、下りのルートととしての方が良いという印象だ。
上高地帝国ホテルを脇に見ながら、全く活火山とは思えない山の麓を登っていく。ちゃんと注意の看板は読んだ。
* * *
途中、ハシゴがいくつもあり、下りは大変だろうという印象だ。一つ長いハシゴの手前ですれ違った下山する登山者に「山小屋まであとどれぐらいですか?」と聞いた。「あー、あのハシゴから、行ったところです」と言われた。何故か一緒にいた友人が「すぐに」と勘違いしたみたいでその後も「あとちょっとだ」とか言いながら登っていた。「さっきの人も「すぐに」とかは全く言っていなかったですよ」なんて言いながら登り続けさせる。
コースタイムより1時間程度短く山小屋に着く。10時ぐらい。終盤の焼岳小屋でTシャツやバッチを購入した。山小屋のお兄さんはペルーの民族衣装のようなものを着ており仲間の一人が「お兄さん、ペルー行かれたんですか?」とか聞くが「この服か?関西で買うたんや」とか言っている。なんてこった。
* * *
一休みして再び登り始める。ここからが上高地を見渡すことができ、西穂?も見ることができる素敵な空間だ。焼岳自体の山容も格好良い。足場もちょっと岩々していて面白く火山であることを認識させられる。
やはり上の方は風が強い。9月上旬とはいえフリースも持ってこればよかったと感じた。
そして頂上。立ち上るガス。
モヤモヤしていた日帰り登山が忘れるぐらい、ちょうど良い疲労と素敵な百名山だった。
コメント